内容説明
戦後50年目に出た「人肉食」の衝撃の真実――1946年、フィリピン・ミンダナオ島で起こった旧日本軍敗残兵による先住民・ヒガオノン族虐殺と人肉食。癒すことのできない戦争の傷跡を追う、書き下ろしノンフィクション。
●ヒガオノン族に対する「補償」は、彼らをミンダナオ島に送った日本の責務でもあるはずだ。戦後補償については様々な考え方があるが、この問題は人道上の問題として解決がはかられるべきではないだろうか。取材を進めながら彼らの悩み苦しむ姿を知り、また激しく取材を拒否する手紙を読みながら、この本を送り出すことにためらいが全くなかったわけではない。結果的にはこの本も彼らを苦しめることになるのだろうと思う。それでも書くべきだと判断したのは、戦後補償が被害者のためだけではなく「加害者」とならざるを得なかった日本兵のためにも必要なことだと思ったからだ。(あとがきより)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラルル
29
終戦直後のミンダナオ島で起きた日本兵による人間狩り。「偵察隊」と称してフィリピンの民間人を狩り、その肉を食す。老若男女・子供だろうと躊躇なく殺しむさぼるその異常さに、最初は半信半疑でしたが読み進めるうちにこれは狂った真実なのだと知り、改めて戦慄しました。父親を殺され自らはレイプされ続け、果ては父の肉を食す事を強要されたヒガオノン族の姉妹の証言は想像を絶します。もはや極限状態という言葉は言い訳に使えるのか、戦争のせいに出来るのか。 そう思ってしまう程あまりに酷い行いでした2016/09/12
Motomi Kojima
9
今週、大岡昇平さんの「野火」が公開されるので当時の勉強のため読むことに。ミンダナオ島北部アグサン近くのジャングルの中で敗戦が濃くなった後に徴兵された丙種の兵士たちの軍が起こした惨劇。想像を絶する内容で言葉がない。飢えは思考力を奪い、自分たちだけが生きたいと思ってしまうのだろうか。日本軍の敗戦を信じれれば起きなかった事件だけに集団の中でのリーダーの決断が後を引く典型的な例だろう。2015/07/19