内容説明
ここに一枚の集合写真があります。明治21年(1888)6月3日、ベルリンのフリードリッヒ写真館にて撮られたもの。陸軍省医務局長の石黒忠悳が欧州視察の途次、ドイツに立ち寄ったのを機にしての記念撮影でした。写っているのは森鴎外を含む19人、そのほとんどが日本人医学留学生です。彼らはその後、帰国してそれぞれの分野で大きな業績を挙げますが、全員が一堂に会することは二度とありませんでした。その意味でこの写真は近代日本医学史上の「奇跡の一瞬」をとらえたものと言えましょう。しかし、驚くべきことに、ここに写っているのがいかなる者たちだったのか、最近までほとんどわかっていなかったのです。本書は、この一枚の写真に写っているそれぞれの男たちとその周辺、鴎外との関係を追い、近代日本医学のあけぼのを描きます。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
32
鴎外が左端に収まったベルリンで撮られた集合写真がある。それぞれのタイミングでドイツへ留学し、全員が医学を志し、人生が交差した一瞬からその他の人物の来歴を追う。帰って日本の医学の発展に寄与した人物が大半だ。『獨逸日記』の記述を引いて鴎外との交流と、その後にどんな生涯を送ったかを記している。最も有名なのは脚気で対立した北里柴三郎であり、記述も厚い。エリートの鼻持ちならないイメージとは違い、19名中、2番目に若い鴎外が相対化される。人間関係に心を砕いていた様子や、ウマの合わない同道に気を病んだりと、最初は文字の2022/10/26
長老みさわ/dutch
2
一葉の写真がある。明治二十一年六月三日。ベルリンで撮影されたその写真には19名の日本人が写っている。官費・私費でドイツ留学を果たした医学留学生達である。 当時の留学生達は皆選ばれしエリートであり事実、帰朝後は「日本○○学の父」と呼ばれた者が大多数を占める。 写真の中では若輩に当たる森鴎外をキーパーソンに、写真の19人と4人の鴎外ゆかりの友人を生まれから留学に至る経緯、そして帰朝後の生涯までをつぶさに描くことによって当時の日本の医学界の様子が見事に描き出される。 2012/12/02
漢方売り
1
一枚の写真から森鴎外の留学時の交流関係を追うドキュメンタリー。青山、北里、長井くらいしか知ってる人はいなかったが、留学というだけで将来を嘱望されるこの時代の濃密な人間関係が楽しめる。2012/07/24
Fumihiko Kimura
0
「謎を解く」というより、ドイツ留学写真に写った各人の人物譚といった風情。それなりに楽しめた。2015/09/04
onepei
0
タイトルがあまりよくない。2012/12/11