内容説明
近代日本の誇る教養主義の「裏通り」を一望する!
軟派出版の世界で、道楽知識人たちは国家権力と戯れ、一大文化空間を築いた――
「低俗」出版文化の歴史と「書物」「エロ」への欲望を可視化する意欲作
近代日本の出版文化は、岩波書店と講談社に代表される「知識人/大衆」という対比構造によって、しばしば教養主義の観点から論じられてきた。しかし、読書が大衆化した時代に、この図式に収まりきらない非正統的で「知的」な地下出版空間が存在した。
本書では、これまで閑却されてきた非公刊の軟派出版(性風俗、猟奇、犯罪を取り扱った刊行物)とその版元に注目し、教養主義の言説空間との関係性から捉え返すことで、地下出版界をメディア史的に体系化する。
「好色出版の帝王」梅原北明、「書痴」斎藤昌三、「軟派出版界の元老株」伊藤竹酔、「毒舌和尚」今東光など、多くの出版人の足跡を追いながら、同時代の社会運動や芸術運動とのかかわりのなかで広がった「知のネットワーク」を明らかにする。
目次
序 章 教養主義の「裏通り」
第一部 地下出版界の前史
第一章 〈社会運動〉としての自費出版同盟――毒舌和尚・今東光と雑誌『文党』の挑戦
第二章 文藝市場社の「誕生」――烏山朝夢から梅原北明へ
第三章 「直筆原稿」のメディア論――文藝市場社の設立と直筆原稿叩き売り
第二部 地下出版界の成立過程
第四章 〈変態〉な教養/教養としての〈変態〉――逆立ちした教養主義
第五章 愛書趣味とオブジェとしての書物――軟派出版界と限定本の快楽
第六章 〈談奇〉の表象と東アジア――理想郷イメージとしての上海
第三部 地下出版界の成熟と瓦解
第七章 「地下出版」の最期――大衆化するエロ・グロ・ナンセンスと珍書屋の受難
第八章 「裏道の文化」の行方――戦後に残された軟派出版界の残滓
終章 「攪乱」する思想としての地下出版
注
付録 昭和「地下出版界」関連年表――梅原北明とその周辺
あとがき
参考文献一覧
図版出典一覧
人名索引
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