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内容説明
ヒロシマとイタリアをつなぐ<記憶>の旅。
わたしには名前が三つある。
光・S・エレオノーラ。
エレオノーラは、イタリア語で光という意味。
Sは何かって?
ちょっと大げさな名前だからないしょにしてる。
2011年震災後、少女エリーは親戚のいるイタリアに少しの間避難する。おいしいものと温かい人たちに迎えられ人心地つくが、思いもよらない歴史に触れ、エリーの名前のSに込められた本当の意味を知ることになる。
戦争を乗り越えて生きてきた人々の“希望”を描く、ヒロシマとイタリアをつなぐ物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
81
戦争の話▽311東日本大震災とフクシマ原発事故の後、落ち着かない気持ちをか変えていたエリー。エリーは母親の故郷、北イタリアの祖母の家にひとりで行く。ノンナ(祖母)の弟は第二次世界大戦中、ナチスと戦い17歳で亡くなった。ノンナから北イタリアの戦争の歴史を聞く。帰国後の夏休み、エリーは父親の実家の広島に行く。被爆者の祖父母から当時の話を聞き、原爆記念館を見学する▽知ること。伝えること。忘れないこと▽2022年刊。良本▽主人公のエリーがとても優秀で、両親からも祖父母からも深く愛されているのかわかる。理想的。2022/10/30
けんとまん1007
61
眼にした現実を忘れないこと。歴史を知ること。その地の現在を知ること。忘れないようにすること。そこにあるのは、言葉・コトバ。もちろん、映像・画像・音もある。それでも、自分は、言葉の力を一番信じている。あらゆる出来事は、遠いようで遠くないと思うこと。驚くほど、身近なところまで迫っていることも多いのではないか。マザーテレサの言葉が浮かぶ。無関心であることの意味。「忘却にあらがう」・・この本の前に読んだ本のタイトルとも響きあう。2022/10/19
ぶんこ
59
辛かった。特に驚いたのが同盟国だったはずのイタリアをドイツが占領しユダヤ人狩りだったり、パルチザンを虐殺していたこと。広島出身の父と北イタリア出身の母の子光(エリー)は、東日本大震災に遭遇。エリーだけがイタリアに行き、ある時文字が書かれている黒くなったパンを見つける。そのパンは祖母のパルチザンだった兄の形見だった。イタリアでのドイツ軍の虐殺、広島の原子爆弾での惨事。命を落とした子どもたちを忘れないように、文字に残して伝えて行く。イタリア人も日本人も、ドイツやアメリカを拒否せず仲良くする度量があった。2023/05/13
しゃが
57
朽木さんの物語にまた「伝える」「忘れない」ことがあるという思いにさせてくれた。2011年震災の3月イタリア人の母と広島出身の父を持つ中学生エリーは母の故郷に訪れ、同じ名前を持つ祖母から、戦争中のナチスの出来事や殺された大叔父パオロへの思いを聴く。そして夏休み、祖父のいる広島へ、そこで原爆の当時のこと、亡くなった大叔母真美子への思いを聴く。そして亡くなった二人が残した石のようになった血で書かれたパンと日記には若い命の忘れられない「言葉」があった。きっとウクライナやロシアにも同じことが起きているのだろう。⇒2022/08/30
joyjoy
28
ゾフィーが見た夢。「地面がぱっくり裂けて、足もとにいた赤ん坊が落っこちそうになった。その子をすんでのところで助けあげた夢を見たって。この赤ん坊って、だれのことだと思う?」ノンナ(おばあちゃん)の問いに、エリーはその答えとなる言葉をきっと知っていたね。パンに書かれた言葉も同じ。ただ、言葉が本当に力を持つのは、そこにつながるストーリーや意味を見つけたとき、なんだろうな。 広島にいても知らないことがまだまだたくさんある。祈念館に行ってみなくては。2022/11/03