内容説明
僕の祖父には、秘密があった。
終戦後と現在、ふたつの時代を「カレー」がつなぐ
絶品“からうま”長編小説
ゴミ屋敷のような家で祖父・義景と暮らすことになった孫息子・桐矢。カレーを囲む時間だけは打ち解ける祖父が、半世紀の間、抱えてきた秘密とは――ラスト、心の底から感動が広がる傑作の誕生です。
【感動の声、続々!】
「ひとの持つどうしようもなさ、そこから生まれる愛おしさ。味わい深く余韻ある作品」――町田そのこさん
「あの時代を生きてきた祖父と、この時代を生きているぼく。どうしようもない噛み合わなさと、どう向き合うか。いま必要なテーマをじっくり煮込んだこれぞテラチ風味の極うま長篇」――瀧井朝世さん
カバー撮影/山本まりこ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
532
寺地 はるな、5作目です。王様のブランチBOOKコーナーで紹介されたので読みました。カレーを巡る祖父と孫の物語、中辛位の佳作でした。 私はB級グルメなので、汎用のレトルトカレー(中辛)は食べません🍛🍛🍛 https://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-53806-82022/07/16
さてさて
513
祖父が苦手という二十五歳の桐矢が、『カレーのルーやレトルトカレーのメーカー』である『ピース食品』に一生を捧げた祖父・義景と一つ屋根の下で暮らす姿が描かれたこの作品。そこには”終戦後と現在、ふたつの時代”が並行して描かれるからこそ見えてくる奥深い物語の姿がありました。美味しそうなカレーの描写に食欲が強く刺激されるこの作品。祖父と孫という二人の関係性を微笑ましく描いていく寺地はるなさんの上手さに魅了されるこの作品。『カレー』という料理が二つの時代を紡ぐ物語の中に、人のあたたかい感情を見る素晴らしい作品でした。2023/08/20
まちゃ
407
戦後に貧しい幼少期を過ごし、高度経済成長期に食品会社の営業として働いた、頑固で不器用な祖父・小山田義景と、自分の世界を快適に過ごすことに価値を置く孫・佐野桐矢。二人がカレーを通じてお互いを理解していく家族の絆の物語。いい話でしたが、それほど感動はありませんでした。祖父の秘密がね。早くきちんと娘たちに話しておけば、別の家族の形ができただろうにと。2022/07/25
kotetsupatapata
386
星★★★★☆ 派手などんでん返しも無く、涙で心の泉が満たされる事はありませんが、ありふれた家族の日常を、独特の比喩を交えながら紡いでいく寺地はるなさんらしい1冊でした。 遮二無二に不器用にしか生きられなかった祖父の思いと、何か達観して全てを冷ややかに見つめている桐矢の考え方 双方のギャップがもどかしく感じました。 家庭を省みる事の無いように思えた祖父も、幼少期から家族に大切に思われなかった故どうしてよいかが分からないの件が心に刺さりました。 それ故妻と娘達との別離は義景の目にはどう写ったのでしょうか?2022/10/16
OSOGON15
373
貧しく悲しい少年時代を生き、厳しい昭和の高度成長期を生きてきた頑固で偏屈な祖父。尚且つゴミ屋敷状態の家で同居することになった唯一男子孫の桐矢、祖父の娘3人と共にカレーを通じて家族としての思いが交錯する…。人生において大切な事を教えてくれる様な温かな気持ちなる。読了後はカレーが食べたくなりました。2023/06/23