ちくま新書<br> ルポ 名門校 ──「進学校」との違いは何か?

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ちくま新書
ルポ 名門校 ──「進学校」との違いは何か?

  • 著者名:おおたとしまさ【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2022/04発売)
  • GW前半スタート!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~4/29)
  • ポイント 240pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480074713

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内容説明

「名門校」は単なる「進学校」と何が違うのか? 男女御三家、地方公立名門校など全国30校を丹念に取材。旧制中学、藩校、女学校、大学予科など系譜別に、名門校に棲みつく「家付き酵母」の正体に迫る。それぞれの名門校に受け継がれる文脈の壮大さ奥深さそして人間臭さを知ってしまうと、偏差値や進学実績といった瞬間的かつ一面的な基準で学校を論ずる無意味さや、場当たり的な教育改革議論に対する違和感あるいは嫌悪感から逃れられなくなってしまうだろう。

目次

はじめに
序章 日比谷高校の悲劇
名門校ほどガリ勉・スパルタではない
先輩たちからの置き土産
私立が有利というのは思い込み
高校勢力図を塗り替えた「日比谷潰し」とは?
学校群制度をやめても時すでに遅し
学校は無機質なシステムではない
古い学校にはそれだけで価値がある
かつてバケモノのような高校があった
実は私立のほうが安上がりなシステム
私立だから鍛えられる「生きる力」
地方でご当地名門校が育つ理由
教育格差は西高東低
関東に私立が多いわけ
戊辰戦争の影響がいまも
医学部誘致で地域が育つ
教育における不易と流行は何か?
第1章 旧制中学からの系譜
学校群制度が、中学受験人気に火を付けた
ゆとり教育が中学受験熱を煽った
戦前の中学受験はいまよりも熱かった
継ぎ接ぎだらけの中等教育
六・三・三制への移行で私立中高一貫校が誕生
新制の中学校と高校は「中等教育分断校」!?
男女共学化した公立、男女別学を続けた私立
私立元旧制中学の多くは現在も男子校

▼組織の中でも個性を発揮できる青年を育てる 開成(東京都・私立)
▼したたかな気骨あってのゆるやかさ 東海(愛知県・私立)
▼人生を自由に生きる術を伝授する 麻布(東京都・私立)
▼少なくとも三兎を追え 浦和(埼玉県・県立)
▼進学実績が落ちても人気が落ちなかった強烈な校風 済々黌(熊本県・県立)
第2章 藩校からの系譜
現在の学習塾と同じくらいの寺子屋があった
寺子屋から小学校へ引き継がれたものとは?
初期の中学校の約七割は一学校一教員
藩校の「ノブレス・オブリージュ」
廃藩置県を生き延びた藩校の志
藩校以来約三五〇年の歴史を誇る高校も

▼ひととしてどうあるべきか 米沢興譲館(山形県・県立)
▼修猷を誇るな、修猷が誇るひととなれ 修猷館(福岡県・県立)
▼他者のために、勉強するところである 鶴丸(鹿児島県・県立)
▼かっこいい男になれ! 修道(広島県・私立)
第3章 女学校からの系譜
男子校より女子校のほうが多い
女子校にミッション系が多いわけ
幻に終わった官立東京女学校の先進的女子教育
ほったらかしにされた女学校
「良妻賢母主義」に対して私立女学校がとった姿勢とは?
なぜ多様な女子校文化が育ったのか

▼生徒たちの本質的な自由さを引き出す 女子学院(東京都・私立)
▼時代の空気を読みしたたかに生きる 雙葉(東京都・私立)
▼自由を守るために、じっと我慢する強さ 神戸女学院(兵庫県・私立)
▼すべてにおいて一流であることが当たり前 浦和第一女子(埼玉県・県立)
第4章 大学予科・師範学校からの系譜
一八九七年まで、日本に大学は一つだけ
戦前の入試最難関は東大入試ではなかった
「東大信仰」が全国に広まったきっかけとは?
構想六七年でついに旧七帝大の完成
慶應義塾や早稲田も大正時代まで専門学校だった
日本の大学設立ビッグバン
昔、教師はエリートだった

▼正統から異端が生まれ、異端が正統になる 慶應義塾普通部・慶應義塾高等学校(神奈川県・私立)
▼旧制高校の教養教育を受け継ぐ 早稲田大学高等学院・中学部(東京都・私立)
▼自ら伸びようとする意欲と力 お茶の水女子大学附属(東京都・国立)
▼本当の厳しさを教えるための自由 筑波大学附属駒場(東京都・国立)
第5章 大正・昭和初期生まれの学校
大正時代に盛り上がった学歴信仰
救世主としての旧制七年制高校
もしも旧制七年制高校がもっとあったなら
戦前最後の学校創立ラッシュ

▼「教育とは何か、学問とは何か」を発信する 武蔵(東京都・私立)
▼品性と学識を兼ね備えた人間であれ 桜蔭(東京都・私立)
▼生徒たちを信じ、好き勝手にやらせてみる 東大寺(奈良県・私立)
▼日本一どころか世界一を目指せる学校 灘(兵庫県・私立)
第6章 戦後生まれの星
高度経済成長期と教育の大衆化
高校紛争で高校が自由化
学歴は「自由への通行手形」だった
共通一次の導入で、大学が序列化

▼ほんわかとした校風のなかに厳しさがある 栄光学園(神奈川県・私立)
▼元祖「塾要らず」 ラ・サール(鹿児島県・私立)
▼ものの見方考え方を合理的科学的にする 駒場東邦(東京都・私立)
▼想像力や知的好奇心を育む情操教育 聖光学院(神奈川県・私立)
▼教育の集大成は進学実績よりも自調自考論文 渋谷教育学園幕張(千葉県・私立)
第7章 学校改革という決断
センター試験が偏差値主義を助長
大学は序列化、高校は下克上
私立高校の危機感が公立高校にも飛び火

▼本当にイケてると思う? 海城(東京都・私立)
▼名物「運針」の精神で生徒が伸びる 豊島岡(東京都・私立)
▼安心感を与え自己肯定感を高めれば学力も伸びる  友(東京都・私立)
▼優等生ではないリーダーを育てたい 堀川(京都府・市立)
終章 進学校と名門校は何が違うのか?
学校のあゆみを知る意味
二〇人もの首相を輩出したイギリス名門校
イギリスでも大学合格者数ランキングは人気
幕末維新の陰にイートン校あり
校風ならぬ寮風がある
理念がひとを離れて歩き出す
市場原理で教育を語ってはいけない理由
教育の価値は教育されているときにはわからない
教育の成果は遅れてやってくる
「自由」「ノブレス・オブリージュ」「反骨精神」
なぜ名門校はリベラル・アーツを標榜するのか
名門校は目を良くするところ
生徒を信じて自由を学ぶ
日本社会の「ずるい」の文化
ノブレス・オブリージュは生存戦略
勝ち組になるために勉強するのは間違い
一番になれない環境のメリットとは?
生徒同士による無形価値共有
共同体意識とノブレス・オブリージュ
なぜ教育の独立性が大事なのか
反骨精神がイノベーションをもたらす
名門校を鍛え上げる時間の洗練
修羅場をくぐり抜けた学校のみにある「生きる力」
学校という生命体の動的平衡
シラバスはコピーできても、志はコピーできない
SSHやSGHよりも大事なもの
名門校には多様性と柔軟性がある
「当たり前」が子どもの学業に影響する
学校とは、社会として文化を継承する場
名門校の「ハビトゥス」
共同幻想を演じるパントマイム
家付き酵母の正体とは?
おわりに
参考文献
【資料編】
〔資料1〕東大+京大+国公立大医学部医学科 合計合格者数
合格率 高校ランキング
〔資料2〕東大
京大
国公立大医学部医学科 合格者数 高校ランキング
〔資料3〕旧七帝国大学 年代別平均合格者数 高校ランキング
〔資料4〕47都道府県別 高校入試偏差値ランキング

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

きみたけ

53
著者は教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏。名門校に共通する要素を見出し、「良い学校教育とは何か」「良い学校はどのように進化するのか」といった普遍的なテーマに踏み込んだ一冊。全国30校を丹念に取材し、名門校に棲みつく「家付き酵母」(もしくは、何十年も使い込まれた土鍋に染み込んだ出汁のうまみ)の正体に迫ります。名門校に共通する特徴は「自由」「ノブレス・オブリージュ」「反骨精神」の3つ。生徒に生きる力を授けられるだけでなく、学校そのものの生きる力が強くなるという「時間の洗練」が条件だそうです。2022/11/06

yomineko@猫と共に生きる

29
わーい母校載ってる的なノリで読んだw灘開成に負けるな!ではなく公立の良さを書いてくれている(気がする)。学費の安さは神!友達に同じ位家が貧乏な子がいるとかもあるw静岡高校凄い。甲子園常連!うちですか?旧制中学時代に出てたらしいかも知れない。遠い目。浦和いいなぁと思うけど男子校。前高もなぁ~甲子園初の完全試合の人出てたし。塾に行ってない子も多かったけど、他校の名門ほど面倒見は良くなく悪い意味で放置wな癖に私大は駄目よ的な😨済々黌と修猷館は私立ぽい名前で素敵✨岡山朝日もいいね!でも中高一貫私立に憧れる我💛2023/01/11

遊々亭おさる

21
進学校はひとりでも多くの生徒を難関大学に合格させるための受験に特化した学校と定義するならば、名門校とはヨーロッパで言うところのノブレス・オブリージュ(高貴なる義務)を会得するための学びの場。旧制中学や藩校などにその系譜を持つ各地の名門校の歴史を遡り、それぞれの学校の特徴と共通点を浮かび上がらせた一冊。高校野球で日本各地から有力選手をかき集め、スパルタ方式で勝ちに拘る強豪校と勝ちには拘るが野球を教育の一環と捉え、人間形成の場とするチームの違いと似ているか。教育とは共に助け合える関係性を築ける社会を作ること。2022/06/12

まゆまゆ

20
人々が名門校と呼ぶ中学・高校は、他校と何が違うのか。学校設立の背景にある歴史的要素と地域性によって大きく影響しているが、共通しているのは、自由、ノブレスオブリージュ、反骨精神を体現できる学校である、ということか。教育の効果は遅れてやってくる。20、30年後にその学校の教育の価値が分かる、という意味では、地元で名門と評価されてきた学校に間違いはないってことかなぁ。2022/06/14

ぶう

16
普段は進学実績がクローズアップされやすい進学校も、学校毎に様々な特色がある。特に名門校と言われる学校には長い歴史があり、それに根ざした素晴らしい建学の精神や教育理念がある。人生で一番大事と言っても過言ではない多感な時期の6年間を、このような素晴らしい環境で過ごさせてやりたいと思うのは親心として当然ではないだろうか。自分の子供も中学受験をさせるつもりであるが、小学生のこの時期に受験勉強をさせることに、自分自身やはり若干の違和感はある。だがそれを乗り越えてでもたどり着きたいと思えた。親子共々頑張っていきたい。2022/09/14

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