内容説明
十倉雅和氏(経団連会長・住友化学会長)、絶賛! 「住友の事業精神の原点は、ここにあった」煙害問題の解決、企業の利ではなく人々のために……。“ESGの先駆者”伊庭貞剛の生涯を描き切った感動のノンフィクションノベル。この男なくして「住友」は語れない! 幕末、志士として活動後、司法官となった伊庭貞剛は、叔父で総理事の広瀬宰平に招聘され、住友に入社する。しかし当時の住友は、別子銅山の煙害問題を抱え、さらには宰平の独断専行が目にあまるほどであった。住友財閥の中にありながらも、住友を破壊せんばかりの覚悟を持って改革に臨んだ、“住友中興の祖”とよばれる経営者に光をあてた傑作長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジュール リブレ
63
三井=越後屋呉服店、三菱=坂本龍馬からの岩崎弥太郎、はなんとなく。住友はよく知らないなぁと、手に取ってみました。四国・愛媛・別子銅山で財を蓄えた頃のお話。お侍もいれば町人から成り上がる人もいて、江戸末期から明治を生きた人たちは、ほんとに明日が見えない中で、日々を過ごしたんだろうなと、改めて明治が時代劇になったのを実感。あと、思ったのは、晩節を穢すこと。引き際は大事だな。この歳になって改めて。2023/06/03
PEN-F
36
住友財閥の礎を作った男のノンフィクション小説。維新を経て明治政府の中枢に置かれた政治家たちは腐敗と汚職にまみれてしまった。激動の幕末期に幾多の維新志士や新撰組などが己の信念を持って闘いに明け暮れ、散っていったのはこんな腐った未来の為だったのか?住友も例外ではなく、銅山採掘での利益を重視し公害汚染によって民を苦しめ大地を荒らしていく。そして100年先の希望に満ちた未来を夢見るあの男が立ち上がる…。今なお日本に多大な影響力を持つ住友財閥の底力を窺い知れる素晴らしい一冊。2022/03/27
kazuki
10
住友の礎を築いた伊庭貞剛を描いたストーリー。日本の大財閥として現代に君臨しているが、この人物の尽力がなければ日本を代表する財閥になっていなかったかもしれない。貞剛氏が生きていた時代から目先の自分たちの利益にとらわれない先を見据えた経営、信用を徹底する事業精神はすごいと思った。別子銅山は1度は登ってみたい。2023/03/25
蝉の一生
5
著者の講演を聴く機会があり、読んでみました。伊庭貞剛という人、すごい人だ、というのが第一印象です。現在、そして今後も必要とされるSDGs、持続可能性を会社そのものの利益に優先して考える。いくらそれまでの内部留保があり、オーナー的にふるまえたとしても、普通にできることではありません。尊敬できる人の薫陶を受け、目標に向かってぶれずに突き進みます。そして、ここも素晴らしいのが、自らの「下山」を意識し、実践したことです。これが、どの世界でも本当に難しいと感じます。2024/01/07
g.t
5
日本の一大財閥である住友家の苦難を乗り越える様々が描かれている。伊庭は時節を誤らず何が正しいかを適切にとらえて判断をしていく、そのためには上位者にも諫言を厭わない。その意味で芯の通った経営者だった。目の前の利益を追い求めるだけでなく、長期的に、国家にとって、その民にとって何をするべきなのか、この視座をもって日々前に進んでいかなければいけない。2023/07/18