内容説明
殺し屋、ポップスター、売れない作家、軍人の妻、がんを告知された男……なんのつながりもない11人だったが、ある飛行機に同乗したことで、運命を共にする。飛行機は未曾有の巨大嵐に遭遇し、乗客は奇跡的に生還したかに見えたが――。ゴンクール賞受賞作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
372
ゴンクール賞受賞作ということで読みました。ゴンクール賞受賞作、タイトルから哲学的な作品かと思いきや、ベストセラーになるだけあって、エンタメ寄りのSFミステリの秀作でした。フランスで110万部売れるだけあります。2022年の翻訳ミステリの上位にランクイン間違いなしです。 https://www.hayakawabooks.com/n/n57e7574449462022/05/18
パトラッシュ
331
乱気流に巻き込まれた旅客機に乗り合わせた旅客が、並行世界で同じ目に遭遇した面々が3か月後にこちら側へ押し出されたと知る。出身地が異なるだけで記憶も容姿も全く同じダブルが現れたのだから、本人や周囲の困惑は想像を絶する。ある者は和解し、ある者は殺され、国際政治まで大混乱する。統制と情報が行き届いた現代だからこそ全世界がにわかSF評論家と化して百家争鳴する有様を、フランス作家らしい皮肉と諧謔に満ちた筆致で描く。この件で散々苦労させられたアメリカ大統領が、再び出現した同じ機体の撃墜を命じる結末には同感してしまう。2023/01/23
まこみや
282
第二部までこの異常な「コピー」現象の種明かしとして作者はどんな仕掛けを用意しているのだろうという興味で読んでいた。第三部になって、作者の狙いは謎の解明にあるのではなく、異常に遭遇した〈ダブル〉の人間同士の対応と周囲の反応にあるのだ、と遅まきながら気づいた。直近3ヶ月の体験と記憶以外は全く同じ“自分”を他者として認識する時、アイデンティティの拠り所はどこにあるのか。突き詰めれば、現実の私が「自己」と信じる根拠がいかに実体のないものか、気づかせてくれる。ちょうど言葉が実体がなく、関係(差異)でしかないように。2022/11/13
まちゃ
228
分身(ダブル)をテーマにしたSFストーリー。殺し屋、売れない作家、シングルマザーの映像編集者、カエルを飼う少女、黒人弁護士、ナイジェリアのポップスターらの身に起こった異常事態。第二部のSFパートからは引きこまれました。面白かったです。/<われ思う、ゆえにわれはほぼ確実にプログラムなり>"デカルト2.0"2022/03/02
seacalf
226
事前に予備知識なしで読んだので『ええっ!』と気持ち良い驚愕体験を味わえた。殺し屋、小説家、カエルを飼う少女、新鋭弁護士、歌手、老建築家と若いエディターのカップル。序盤は多くの登場人物が矢継ぎ早に紹介されて漫然とした印象なのだが、突如衝撃の展開へ。宗教問題や哲学的分野など理解が及ばぬ部分もあるが、辛辣なユーモアやコミカルな場面もあって遊び心があるし、何よりこの設定でどうやって解決させるのかとワクワクしながら読めた。自分が同じ目にあったらと想像してしまう。思いがけないアイディアに翻弄される楽しさを感じた。2022/11/28