内容説明
人知れず抱える居心地の悪さや寂しさ。
そんな感情に寄り添い、ふと心を軽くする物語
「コードネームは保留」
楽器店で働く優香は、人知れず“殺し屋”の設定を生きることで、
味気ない日々をこなしていた。
「タイムマシンに乗れないぼくたち」
新しい街に馴染めない「ぼく」は、太古の生物が好きで、博物館が唯一落ち着く場所だった。
ある日、博物館で“現実逃避”をしているスーツ姿の男性と出会い――
「夢の女」
死んだ夫のパソコンに残されていた小説原稿。
それは、夫と「理想の女」が主人公のSF小説だった。
「深く息を吸って、」
息をひそめるように日々を過ごすかつての「きみ」に、私は語りかける。
「対岸の叔父」
町いちばんの変わり者、それがぼくの叔父さんだった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
452
寺地 はるな、4作目です。著者の初の短編集、どの作品も好いですが、オススメは、『コードネームは保留』&表題作『タイムマシンに乗れないぼくたち』です🦕 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639149782022/04/27
さてさて
404
「別冊文藝春秋」に掲載された七つの短編が収められたこの作品には、”孤独”と絶妙な距離を生きる人たちが主人公となる物語が展開します。そこには、結末に何か大きな進展があるわけでも劇的な変化が起こるわけでもありません。あくまで寺地さんの小説らしく、物語の最初より一歩進んだ未来が柔らかく提示される物語が描かれていきます。『タイムマシン』と言ってもSFな物語が展開するわけではないこの作品。寺地さんらしい安定感のある物語展開に安心するこの作品。短編でも変わらない寺地さんらしい独特な雰囲気感の物語を堪能した作品でした。2023/08/24
ムーミン
345
いろんな人がいて、いろんな考え方があって、いろんな生き方があって。誰かがつくった幸せの定義の中ではなく、それぞれの幸せを見つけて日々を重ねていってほしいな。ほっとする作品でした。2022/04/23
seacalf
341
そう、こういう本が読みたいんだよなと嬉しくなってしまう短編集。集団にうまく溶け込めずに疎外感やズレを感じながら生きている人達を描いているのだけど、ひりひり感は皆無、どれも優しさにくるまれるような心地良い読後感。個人的には『コードネームは保留』と『口笛』が好き。『夢の女』は異様な設定だけど読む価値あり。テイストは違うけれど、やっぱりどの短編もすごくいい。『対岸の叔父』もグッときたし。寺地はるなさんは初読みだけど、もう大好きになってしまった。2022/10/01
kotetsupatapata
324
星★★★★☆ 大切な人を亡くしたり、周囲と歩調を合わすことが出来なかったりと、図らずも“ひとり”で生きている人達の短編集。「ひとりだけど、決して孤独では無い。誰かが貴方の事を思ってくれている」そんな気持ちにさせてくれた1冊でした。 小生も他人と合わせるのが苦手なので、登場人物に自分を投影させながら読みました。 彼等の第三者的に醒めてシニカルな他人評もストンと納得。 小生も強く自我を保ちたいものです2022/04/16