内容説明
給与額=その人の市場価値なのか? 年収はなぜ上がらないのか? 米国の各種企業・業界の実態調査をもとに賃金格差の是正策を提言。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばんだねいっぺい
31
面白かったなァ。労働組合運動の最もプリミティブな主張「給与を上げよ」は、巨視的には、国家の社会福祉の増大と重なる大事なことだと改めて理解させられた次第。成果の完璧な測定方法がない以上、年功序列が意外と理にかなっているというのは、現場の感覚とも通じるものだ。もちろん、小さなてこ入れは必要だけど。2022/04/19
Mc6ρ助
15
『アメリカで広がる格差を説明しようとするならば、現在の給与制度における三つの現実を見据える必要がある。平均的な労働者の賃金が停滞していること、エリート層の稼ぎが桁外れになっていること、同じ技能同じ職種の労働者のあいだで給与の格差が拡大しつつあること、である。(p205)』しれっと同一労働同一賃金を法制化してみせた日本もアメリカ同様、いやそれ以上に危機的なのかも知れない。これは失われた日本の回復の処方を示す良著、実行する主体が見当たらないのだけれど。2022/08/25
teddy11015544
11
給料は成果に対して支払われているものではない。いちばん公平な方法は年功序列かもしれない、と言っているが、確かにそうですね。アメリカの話ですが、とても面白く読みました。参考になります。2022/03/19
Hiroo Shimoda
9
給料は個人の生産性と職種ではなく、慣性や公平性、政治や組合の交渉力、需給等で決まると説く。確かに個々人のスキルより企業間格差、つまりはどこに籍を置くかが大きいように思うな。2022/08/11
人生ゴルディアス
6
金融や商社など高所得者層のツイッターを見てると、給与は身分、という共通理解がある気がする。成果主義?駐在員を見ろ! 的な。本書では、権力、模倣、慣性、公平性によって給与は決まるとする。きついとか危険とかで給与が高くなることはなく、むしろごみ清掃業者同士の同種職種であっても、給与の低い現場のほうが怪我や死亡事故が多いのだそうだ。組合を作れ、最低賃金を上げろ、というのは、過去に弊害があったのを踏まえたうえでも現状では正しいことなのだろうと感じたが、アローの不可能性定理を思い出します。2022/05/07