内容説明
「初恋の味」はどこからきたのか?
カルピスは、「初恋の味」として知られる国民飲料だ。ルーツは、モンゴル高原で遊牧民に食されていた乳製品。約100年前に三島海雲によって発見された。
三島は僧侶にして日本語教師、さらには清朝滅亡で混乱下の大陸を駆け抜けた行商人だ。日本初の乳酸菌飲料を生み出し、健康ブームを起こした。
没後、半世紀近く経ち、三島の名は忘れ去られた。会社も変わった。だが、カルピスは今も飲まれ続ける。三島からすれば本望かもしれない。「国利民福」を唱え、会社の利益よりも国民の健康と幸せをひたすら願った。
カルピスの聖地・モンゴル高原まで訪ね、規格外の経営者の生涯に迫った傑作人物評伝。
<近代文明の危機は、一九七三年よりも恐らく遥かに深まっているのだろう。救いの大きな鍵はきっとモンゴル的なるものにある。三島海雲の伝記と思想は今こそ学ばれねばなるまい>――解説・片山杜秀氏
※この作品は単行本版として配信されていた『カルピスをつくった男 三島海雲』の文庫本版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
breguet4194q
122
1919年7月7日七夕の日に販売されたカルピス。以来、人に愛され続けるこの飲み物は、創業者の人生哲学が凝縮された品と言って過言ではないと思います。創業者の人生を振り返りながら、著者が実際に大陸に渡り、在りし日の創業者の足跡を辿ります。膨大な資料とインタビューで、充実度が極めて高く、販売より約100年経つ今こそ、創業者について記録を残せるギリギリの時期。世の為人の為と「国利民福」を掲げる姿勢は、本当に尊敬できます。俗に言う経営者らしくない姿勢が殊更印象に残りました。2022/07/07
はっせー
49
今年読んだノンフィクションの中で一番良かった!カルピスは国民の99.7%飲んだことがあると統計で出ている。だがそのカルピスをつくった人に関してはなにも知らない。本書はカルピスをつくった男三島海雲にフォーカスを当てている。彼が生涯を通して曲げなかったことは慈愛ではなかったのではないかと思う。カルピスを愛し社員を愛していた。面白すぎるし感想をどうまとめていいかがわからないほどの情報量。読めて良かった!2024/12/15
道楽モン
33
明治生まれ故に日清、日露、太平洋戦争さらに関東大震災をもくぐり抜けることになる。浄土真宗の学徒であった三島は、立身出世を誓い上京。ここまでは何事かを成した人物のよくある話だ。彼の特異さはその根底に仏教に根ざした博愛があったことだろう。大陸に渡って苦難を受ける境遇となっても慈愛と博愛が彼を導く。決してストイックな宗教者ではなく、差別とは無縁で大陸人へも自然と溶け込む人柄は清濁併せ呑む度量に至り、モンゴル人の乳製品をヒントにカルピスを開発し、国民の健康に寄与すべく奮闘する。現地取材での筆者の行動力にも敬服。2024/03/31
rokoroko
18
昔お中元でもらうと嬉しいカルピス!あの黒人のマークは黒白の新聞で目立つためだったの?面白い。夫は(68)はカルピス好きよ~私もだけど2023/09/26
ごへいもち
17
苦労の多い時代、そのおかげで今のグータラ暮らしができている💦。モンゴルの文化を破壊する中国。読友さんのご紹介本2025/01/03




