内容説明
北陸加賀に「百姓ノ持チタル国」が建てられて八十年。誰の支配も受けず、民衆が自ら治める一向衆の政は、内外の戦に明け暮れるうちいつしか腐敗し、堕落していた。織田信長や上杉謙信、朝倉義景ら強大な外敵に囲まれ、窮地に陥った加賀に現れたのは、「仁王」と呼ばれる本願寺最強の坊官・杉浦玄任。加賀から越前、さらには日本全土に「民の国」を築くため、玄任は救いなき乱世で戦い続ける――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kiyoshi Utsugi
39
加賀一向一揆の頃を描いた作品。主人公は本願寺の坊官である杉浦玄任(げんとう)。 架空の人物かと思ってたのですが、読み終わってからググってみると、実在の人物でした。😅 加賀一向一揆は、本願寺中興の祖と言われる蓮如の時代(1488年)から1580年に織田信長によって制圧されるまでの約100年の間の出来事。そのうち、本作品は1538年から1576年の最後の40年間を描いたものとなってます。 杉浦玄任の生き様は、本当にすごいなと思いました。民の国を守るために、自分の家族など全てを犠牲にするなんて…2022/03/13
サケ太
21
素晴らしい歴史小説。百姓の持ちたる国、「加賀」。一向一揆による民の国家。それを護ることを本願とする杉浦玄任の数奇な生涯。特異な始まりから、大仏と呼ばれた男の変貌。そして、仁王としての活躍の数々。脇を固める人物らも魅力的。まさか七里頼周をメインに据える小説を読めようとは。物語としての巧さを感じさせてくれる構成が楽しかった。2021/12/31
びぃごろ
18
加賀一向一揆と大阪本願寺の関係について、理解の助けとなった。一揆という言葉から、今迄物語に出できた時は、一向宗の農民たちの暴動となようなものと考えて読み流していたような気がする。戦国の世に一人が支配する国ではなく、皆で考え合議して決める、民の国があったのかー凄いな加賀。内側からの腐敗も始まっていたが、阿弥陀の申し子であり、怒れる仁王、杉浦玄人が現れる。越前朝倉家に息子又五郎を人質にだすのは史実か。北の上杉、南の織田と民の国を守るための戦いの記録。悪役、七里頼周との絡みも成程、面白く描かれていた。2022/06/06
月をみるもの
16
加賀は「百姓の持ちたる国」とか言ってるけど、結局は東大寺の荘園とかローマ教皇領みたいなもんで、武士の代わりに坊主が支配してただけなんでしょ、とずっと思っていた。が、冨樫氏を追い出したあと、すくなくとも数十年間は(現代の民主主義と同一視はできないものの)それなりの民衆自治があったらしい。と偉そうなことを書いてしまったが、「現代の民主主義とやらは、どの程度の自治なんや?」と往時の百姓に反問されたら謝るしかない。すくなくとも、この体勢を守るために命をかけて戦う人は、いまの日本には** %くらいしかいないんで。2023/07/17
月をみるもの
13
長島や石山本願寺でさんざん一向衆に苦渋をなめさせられた信長麾下の武将たちが、越前・加賀を支配した時なにをしたのか。文献に残されてるのは、ごく一部だけで実際には何万人という民衆の虐殺が行われたのだろう。。https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/brandeigyou/brand/senngokuhiwa_d/fil/fukui_sengoku_40.pdf2022/06/10