ちくま新書<br> 夫婦別姓 ──家族と多様性の各国事情

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ちくま新書
夫婦別姓 ──家族と多様性の各国事情

  • ISBN:9784480074409

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内容説明

夫婦同姓が法律で強制されているのは今や日本のみ。本書では、夫婦別姓も可能な英国・米国・ドイツ、通称も合法化したフランス、別姓が原則の中国・韓国・ベルギーで実体験を持つ筆者達が各国の歴史や法律から姓と婚姻、家族の実情を考察し「選べる」社会のヒントを探る。そして、一向に法案審議を進めない立法、合憲判断を繰り返す司法、世界を舞台とする経済界の視点を交えて、具体的な実現のために何が必要なのかを率直に議論する。多様性を認める社会の第一歩として、より良き選択的夫婦別姓制度を設計するための必読書。

目次

プロローグ 栗田路子
30年越しの議論
立て続けの最高裁「合憲」判断
「夫婦別姓」の各国事情を俯瞰する──本書の企画
第Ⅰ部 結婚と姓──各国の事情
第1章 英国 すべての人に「生きたい名前で生きる自由」を 冨久岡ナヲ
1 自由意志を尊重する国
「名前の常識」が通用しない
ネットでいつでも改名OK!
「ミドルネーム」と学校の試験で初めてわかる自分の本名
デフォルトは夫婦別姓
こんなに種類がある「夫婦同姓」
2 自由ゆえに自由がなかった既婚女性の姓名
女性を庇護されるだけの存在に閉じ込めた「カヴァチャー」
結婚によって消え去る女性の姓前
闘う相手は法ではなく世間の意識
ミス、ミセス、ミズ──女性運動第二波が解き放った夫婦別姓
3 「結婚」はどこへ行く?──さらに多様化するカップルと家族のあり方
結婚と姓、パーソナル・ストーリー
結婚の未来型──シビル・パートナーシップ
「伝統」に受け入れられたい同性カップル、結婚しない異性カップル
子どもの姓と家族の一体感
結婚か事実婚か──階級による違い
「みんな違って、みんないい」が当たり前の英国
第2章 フランス 多様なカップルの在り方が少子化に終止符 プラド夏樹
1 結婚と姓(名前)の歴史をひもとく
古代──妻は家財の一部の扱いだった
中世──人口増加とともに姓がつけられるように
キリスト教の結婚と女性観、そして夫婦同姓の萌芽
啓蒙時代、大革命そして姓名不変の法
ナポレオン法典で家父長制が決定的に
パンタロンをはいてフェミニズム運動へ──1830年
2 女性の権利獲得と制度改革──20世紀以後
二度の世界大戦と女性参政権
結婚制度改革、ピル解禁、人工妊娠中絶合法化……家父長制に入った亀裂
通称の法制化
同性婚の法制化が姓に対する意識を変えた
通称の裏にある人生ドラマ様々
税制ハラスメント
3 子どもの姓をどうするか?
姓の継承と男女平等
根強く残る「子どもは父親姓」図式
子どもに自動的に併記姓を
「選択できること」と出産率
第3章 ドイツ 別姓が開く女性活躍の道 田口理穂
1 夫婦同姓の原則から別姓が認められるまでの道程
ここの常識は、別の国では常識でない
たかが姓?
夫婦同姓から連結姓、そして別姓が可能に
「姓はどうしますか」
男性の9割は姓が変わらず
2 多様化する結婚のかたち、家族のかたち
子ども同士の姓は統一
夫婦で納得して決めること
決めたら一生もの
家族の形はさまざまでいい
結婚は人生一度きりとは限らない
外国人差別と姓の関係
3 制度の枠組みが男女平等を後押しする
男女ともに求められるワークライフバランス
法改正で女性の地位向上を後押し
女性の割合を決めるクォーター制
選択的夫婦別姓は、男女平等への第一歩
第4章 ベルギー 家族の姓はバラバラが「普通」 栗田路子
1 旧姓と改姓のあいだにある深くて長いトンネル
初婚で感じた「ためらい」の正体
「旧姓」は、国外に一歩出れば通用しない
2 出生証明の名前が一生ものの国・ベルギー
ベルギー社会は多様性の縮図
婚姻と姓は無関係
フランスに似て非なるベルギー
一歩ずつ男女平等を実現していく
「出生届に記載された姓」が一生もの
3 宗教と結婚の深い関係
家父長制よりも高かったカトリックのハードル
結婚を合理的に考える
「ベルギー的妥協」という国民性
4 多様性が実現したベルギーが抱える課題
婚外子の地位と権利
バイナリーな性と姓名
別姓社会だからこその今日的論点
親子関係の手がかり
第5章 米国 慣習を破り姓を選ぶ自由を実現 片瀬ケイ
1 「自由の国」の開かれた選択肢
結婚しても自由に選べる二人の姓
結婚したら妻の名前はなくてもいいの?
改姓手続きはラクじゃない
姓が違っても夫婦愛、家族愛は同じ
2 伝統的法理と「新世界」での矛盾
引き継がれる英国の慣習
米国最初のフェミニスト
姓前はアイデンティティの証
すでに権利を持っていた「新世界」の女たち
白人の既婚女性にも財産権を
3 女性解放の波
慣習の壁
選択権は女性のもの
それでも夫の姓を名乗るわけ
4 常に更新を続けるアメリカ社会
キリスト教の倫理観が色濃い米国
時代の変化、LGBTQを含む多様性
さまざまな伝統、それぞれの選択
常に新たな時代を生きる
第6章 中国 姓は孤立から独立へ、モザイク模様の大国 斎藤淳子
1 男女平等の原則による夫婦別姓
老いも若きも夫婦別姓が当たり前
夫婦別姓と家族の絆
「家庭革命」で実現した平等な夫婦別姓
世界の女性起業家が中国から
2 日本、台湾、香港で異なる発展を遂げた中国の儒教的家文化
現代と伝統が混在するモザイク型社会
父系血縁主義が作った豊富なボキャブラリー
外の者ゆえの孤立と「夫婦別姓」
家系図ショック
板についた夫婦の家事分担
堂々とした女性と長い道
同じ家制度、日本は夫婦一体主義に発展
台湾と香港の「冠姓」
3 ポスト夫婦別姓の課題──子どもの名前
「当然ながら父親姓」と「一人っ子」政策
一人っ子の新しい名前「父親姓+母親姓」の登場
なし崩し的イノベーション
父親姓vs母親姓の比率は12対1
台湾ではくじ引きも!
変わる結婚と姓
第7章 韓国 戸籍制度を破棄した、絶対的夫婦別姓の国 伊東順子
序「私には二つの名前がある」
日本人女性は可哀想?
1 韓国人の名前と伝統
姓と名
韓国人のファミリーネーム
同じ姓の人同士の結婚は禁止だった?
「民族の伝統」という伝家の宝刀
2 韓国における姓と戸籍の歴史──帝国日本がもたらした「戸主制度」
近代以前の戸籍
民籍法(1909)と朝鮮民事令(1912)
家制度と儒教原理主義
「創氏改名」(1940)と同時に行われた「夫婦同姓」
3 解放後の家族法改正運動
「日帝残滓」としての戸主制度
悲願の家族法改正(1989)
儒教団体の抵抗
「同姓同本禁婚」への違憲判決(1997)と「父母の姓を共に用いる運動」
4 戸籍の廃止と個人登録制度
戸主制度と一緒に戸籍も廃止(2005)
新たな個人登録制度
戸籍がなくなり、結婚制度はどうなったか?
5 残る課題とさらなる民法改正
子どもの姓をめぐる選択
現実が牽引する「自由」
第Ⅱ部 「選べる」社会の実現に向けて
座談会 日本 別姓がなぜ必要なのか、どうしたら実現できるか
登壇者
櫻井龍子(元最高裁判所裁判官)
鈴木馨祐(自民党「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」幹事長)
田代桂子(大和証券グループ本社取締役兼執行役副社長)
栗田路子(司会)
2015年、2021年、最高裁の合憲判断
党内の絶対反対派は1割~2割
世界の投資家が「ジェンダーギャップ指数120位」をどう見るか
世代交代が起きれば……
通称を使い分けることの非生産性と非合理性
夫婦別姓は「多様性指標」
変化しない心地よさに安住していないか?
危機感が変化のトリガーとなる
別姓メリットの「可視化」
効果的な説得方法とは?
現行の「同姓」制度が含む欠陥
選択の自由が保障される制度を!
エピローグ
年表
各国の制度一覧表
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

肉尊

55
友人のN君が結婚したとき、奥さんの苗字が自分と同一化することにこの上ない幸せを感じたという。まさに男の支配力!私は未婚なので気にしたこともなかったが、当事者としては問題ともなりうる。各国の事情を比較すると名前に拘りすぎない様子が垣間見られる。行政上の不具合を感じられなくはないが、姓のあり方で家族が崩壊することはないようだ。日本で検討されているのは選択的夫婦別姓なのだから、旦那の姓に合わせたい人はそれでもいいと思う。変化を恐れる国民性なのだろうか。重い腰はまだ上がらないようだ。2022/01/12

Inzaghico

8
ここで取り上げられているのはイギリス、フランス、ドイツ、ベルギー、アメリカ、中国、韓国だ。パワフルなのは韓国で、日本から押し付けられた戸籍・戸主制度を廃止したのが2005年だ。「家」から「個人」が基本になった。ただし「本貫」というラスボスが残る。これがなかなかの強敵だ。ドイツの章では、とある学術団体で役員を務めていた大学教授がそのポストからどかされたことが書いてある。後任はスカーフをかぶったイスラム系の女性だ。ここを読んでずいぶんドラスティックだと驚いたが、クオータ制でこれくらいしないと世界は動かない。2022/01/08

カモメ

7
各国の事情を知れるのが良かった。イギリスの自由さは驚く。名前を変えるのが容易にでき、学校では入学時にファーストネーム、ミドルネーム、ニックネームで呼びたいか確認があるそう。フランスではルターの宗教革命により聖書が庶民の間にも広まり、女性も比較的早く読み書きを学んだことは女性解放運動が比較的早く進んだ理由の一つ。ドイツでは男女平等の観点が夫婦別姓を可能にした。ベルギーでは通称を制度化する法律がない 出生届に記載された姓が一生となる。2022/09/23

Танечка (たーにゃ)

5
各国の氏名の由来や名付けの習慣について調べる過程で読んだ。本書は日本がどのように夫婦別姓に向き合うべきか考えるための参考書的存在なのだろうが、海外の文芸作品や、映画、ドラマを見る際にも、こう言った知識があったほうがスムーズに鑑賞できるだろうな。2000 年以降になっても姓に関する法改正をしている国があるので、定期的に知識をアップデートしていかないと。2023/07/18

本の虫子

5
夫婦別姓を選択した1人として、他の国の事情も気になったので読んでみた。同姓か別姓かではなく、国によっては連結性・合成姓などのバリエーションがあるということ、その背景にはアイデンティティの維持や宗教の教えなど様々な理由があるということは新しい発見だった。また、子供の姓をどうするかなど、夫婦別姓を選択可能にすればすべて解決とはならないことも理解できた。それでもやっぱり、自分らしい夫婦・家族のカタチを自由意思で選択できることは大事だと思う。長い間夫婦別姓の問題と闘ってきた人々の願いが込められた力強い一冊だった。2022/07/21

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