- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
夫婦同姓が法律で強制されているのは今や日本のみ。本書では、夫婦別姓も可能な英国・米国・ドイツ、通称も合法化したフランス、別姓が原則の中国・韓国・ベルギーで実体験を持つ筆者達が各国の歴史や法律から姓と婚姻、家族の実情を考察し「選べる」社会のヒントを探る。そして、一向に法案審議を進めない立法、合憲判断を繰り返す司法、世界を舞台とする経済界の視点を交えて、具体的な実現のために何が必要なのかを率直に議論する。多様性を認める社会の第一歩として、より良き選択的夫婦別姓制度を設計するための必読書。
目次
プロローグ 栗田路子
30年越しの議論
立て続けの最高裁「合憲」判断
「夫婦別姓」の各国事情を俯瞰する──本書の企画
第Ⅰ部 結婚と姓──各国の事情
第1章 英国 すべての人に「生きたい名前で生きる自由」を 冨久岡ナヲ
1 自由意志を尊重する国
「名前の常識」が通用しない
ネットでいつでも改名OK!
「ミドルネーム」と学校の試験で初めてわかる自分の本名
デフォルトは夫婦別姓
こんなに種類がある「夫婦同姓」
2 自由ゆえに自由がなかった既婚女性の姓名
女性を庇護されるだけの存在に閉じ込めた「カヴァチャー」
結婚によって消え去る女性の姓前
闘う相手は法ではなく世間の意識
ミス、ミセス、ミズ──女性運動第二波が解き放った夫婦別姓
3 「結婚」はどこへ行く?──さらに多様化するカップルと家族のあり方
結婚と姓、パーソナル・ストーリー
結婚の未来型──シビル・パートナーシップ
「伝統」に受け入れられたい同性カップル、結婚しない異性カップル
子どもの姓と家族の一体感
結婚か事実婚か──階級による違い
「みんな違って、みんないい」が当たり前の英国
第2章 フランス 多様なカップルの在り方が少子化に終止符 プラド夏樹
1 結婚と姓(名前)の歴史をひもとく
古代──妻は家財の一部の扱いだった
中世──人口増加とともに姓がつけられるように
キリスト教の結婚と女性観、そして夫婦同姓の萌芽
啓蒙時代、大革命そして姓名不変の法
ナポレオン法典で家父長制が決定的に
パンタロンをはいてフェミニズム運動へ──1830年
2 女性の権利獲得と制度改革──20世紀以後
二度の世界大戦と女性参政権
結婚制度改革、ピル解禁、人工妊娠中絶合法化……家父長制に入った亀裂
通称の法制化
同性婚の法制化が姓に対する意識を変えた
通称の裏にある人生ドラマ様々
税制ハラスメント
3 子どもの姓をどうするか?
姓の継承と男女平等
根強く残る「子どもは父親姓」図式
子どもに自動的に併記姓を
「選択できること」と出産率
第3章 ドイツ 別姓が開く女性活躍の道 田口理穂
1 夫婦同姓の原則から別姓が認められるまでの道程
ここの常識は、別の国では常識でない
たかが姓?
夫婦同姓から連結姓、そして別姓が可能に
「姓はどうしますか」
男性の9割は姓が変わらず
2 多様化する結婚のかたち、家族のかたち
子ども同士の姓は統一
夫婦で納得して決めること
決めたら一生もの
家族の形はさまざまでいい
結婚は人生一度きりとは限らない
外国人差別と姓の関係
3 制度の枠組みが男女平等を後押しする
男女ともに求められるワークライフバランス
法改正で女性の地位向上を後押し
女性の割合を決めるクォーター制
選択的夫婦別姓は、男女平等への第一歩
第4章 ベルギー 家族の姓はバラバラが「普通」 栗田路子
1 旧姓と改姓のあいだにある深くて長いトンネル
初婚で感じた「ためらい」の正体
「旧姓」は、国外に一歩出れば通用しない
2 出生証明の名前が一生ものの国・ベルギー
ベルギー社会は多様性の縮図
婚姻と姓は無関係
フランスに似て非なるベルギー
一歩ずつ男女平等を実現していく
「出生届に記載された姓」が一生もの
3 宗教と結婚の深い関係
家父長制よりも高かったカトリックのハードル
結婚を合理的に考える
「ベルギー的妥協」という国民性
4 多様性が実現したベルギーが抱える課題
婚外子の地位と権利
バイナリーな性と姓名
別姓社会だからこその今日的論点
親子関係の手がかり
第5章 米国 慣習を破り姓を選ぶ自由を実現 片瀬ケイ
1 「自由の国」の開かれた選択肢
結婚しても自由に選べる二人の姓
結婚したら妻の名前はなくてもいいの?
改姓手続きはラクじゃない
姓が違っても夫婦愛、家族愛は同じ
2 伝統的法理と「新世界」での矛盾
引き継がれる英国の慣習
米国最初のフェミニスト
姓前はアイデンティティの証
すでに権利を持っていた「新世界」の女たち
白人の既婚女性にも財産権を
3 女性解放の波
慣習の壁
選択権は女性のもの
それでも夫の姓を名乗るわけ
4 常に更新を続けるアメリカ社会
キリスト教の倫理観が色濃い米国
時代の変化、LGBTQを含む多様性
さまざまな伝統、それぞれの選択
常に新たな時代を生きる
第6章 中国 姓は孤立から独立へ、モザイク模様の大国 斎藤淳子
1 男女平等の原則による夫婦別姓
老いも若きも夫婦別姓が当たり前
夫婦別姓と家族の絆
「家庭革命」で実現した平等な夫婦別姓
世界の女性起業家が中国から
2 日本、台湾、香港で異なる発展を遂げた中国の儒教的家文化
現代と伝統が混在するモザイク型社会
父系血縁主義が作った豊富なボキャブラリー
外の者ゆえの孤立と「夫婦別姓」
家系図ショック
板についた夫婦の家事分担
堂々とした女性と長い道
同じ家制度、日本は夫婦一体主義に発展
台湾と香港の「冠姓」
3 ポスト夫婦別姓の課題──子どもの名前
「当然ながら父親姓」と「一人っ子」政策
一人っ子の新しい名前「父親姓+母親姓」の登場
なし崩し的イノベーション
父親姓vs母親姓の比率は12対1
台湾ではくじ引きも!
変わる結婚と姓
第7章 韓国 戸籍制度を破棄した、絶対的夫婦別姓の国 伊東順子
序「私には二つの名前がある」
日本人女性は可哀想?
1 韓国人の名前と伝統
姓と名
韓国人のファミリーネーム
同じ姓の人同士の結婚は禁止だった?
「民族の伝統」という伝家の宝刀
2 韓国における姓と戸籍の歴史──帝国日本がもたらした「戸主制度」
近代以前の戸籍
民籍法(1909)と朝鮮民事令(1912)
家制度と儒教原理主義
「創氏改名」(1940)と同時に行われた「夫婦同姓」
3 解放後の家族法改正運動
「日帝残滓」としての戸主制度
悲願の家族法改正(1989)
儒教団体の抵抗
「同姓同本禁婚」への違憲判決(1997)と「父母の姓を共に用いる運動」
4 戸籍の廃止と個人登録制度
戸主制度と一緒に戸籍も廃止(2005)
新たな個人登録制度
戸籍がなくなり、結婚制度はどうなったか?
5 残る課題とさらなる民法改正
子どもの姓をめぐる選択
現実が牽引する「自由」
第Ⅱ部 「選べる」社会の実現に向けて
座談会 日本 別姓がなぜ必要なのか、どうしたら実現できるか
登壇者
櫻井龍子(元最高裁判所裁判官)
鈴木馨祐(自民党「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」幹事長)
田代桂子(大和証券グループ本社取締役兼執行役副社長)
栗田路子(司会)
2015年、2021年、最高裁の合憲判断
党内の絶対反対派は1割~2割
世界の投資家が「ジェンダーギャップ指数120位」をどう見るか
世代交代が起きれば……
通称を使い分けることの非生産性と非合理性
夫婦別姓は「多様性指標」
変化しない心地よさに安住していないか?
危機感が変化のトリガーとなる
別姓メリットの「可視化」
効果的な説得方法とは?
現行の「同姓」制度が含む欠陥
選択の自由が保障される制度を!
エピローグ
年表
各国の制度一覧表
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
肉尊
Inzaghico
カモメ
Танечка (たーにゃ)
本の虫子