内容説明
2015年、シリアの首都近郊の町ダラヤでは、市民が政府軍に抵抗して籠城していた。政府軍に空爆されるなか、人々は瓦礫(がれき)から本を取り出し、地下に「秘密の図書館」を作った。ジャーナリストの著者は、図書館から彼らが得た希望を記録していく。図書館に安らぎを、本に希望を見出した人々を描く感動のノンフィクション!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
112
自由を求めシリアのアサド独裁政権に対抗する反政府軍。彼らを封じ込める為に封鎖された町ダラヤ。政府軍に爆撃された街で瓦礫の中から本を集めて作られた秘密の図書館。片手にカラシニコフ、片手には本。この図書館を利用するのは自由シリア軍の若き兵士達。こんな極限状態に於いても、いや極限状態であるからこそ自らの支えとなる本が必要なのだろうか。「本、それは教育の大きな武器。圧制を揺るがす武器」どんな独裁者であっても智を求める人の心を奪う事はできない。書店で偶然見つけた本であったが、出会えて良かった。★★★★★2021/12/07
活字スキー
25
単行本は2018年刊行。「21世紀最大の人道危機」と呼ばれたシリア内戦下、首都近郊の町ダラヤで反政府活動を続ける若者たちは、瓦礫の下から掘り出した本で地下図書館を運営していた。本は彼らにとって、自由への灯火であり成長の糧であり絶望的な状況を生き抜くための慰めでもあった。そして2022年現在、さらなる人道危機が進行している。町が破壊され生活が奪われ、多くの難民が生まれている。理不尽に踏みにじられた人々の声、声をあげることさえ叶わなかった人々の聲に耳を傾けよう。自由万歳。2022/03/13
hnzwd
15
内戦の続くシリアで、地下に「秘密の図書館」を作った"反乱軍"と言われる人たちを描いたノンフィクション。シリア政府側は知的に考えた上での闘争であったことを明かしたくないから、図書館の存在なんて公表せず、ただ反乱軍を制圧した、という報道がされるのみ。空爆自体への国際的な批判は多かったようだけど、日本語ニュースはほとんどなし。ダラヤという町が政府軍と戦い、反乱軍として鎮圧されるまでを書いたノンフィクション。2022/05/28
ザビ
11
「いつか青いワンピースの少女が死者の顔にHOPEと書かなくてもよい日がくると、2+2は確かに4で、5は国連安保理に有罪を言い渡される日がくるのだと」シリア反政府軍の若者が、内戦下でも自分の理性・人間性を保つために本を読み続けながら政府の暴力と戦った記録。本を読むことは、「2+2=5」を信じ込まないようにするための防壁で、「2+2=4」と主張していくための武器でもある。ジョージ・オーウェル「1984」の一節は、今なお独裁権力と戦うシンボルなんだなと。「読書は生存本能」…何でも自由に本が読めて思想言論の自由→2024/10/13
T
10
アサド政権によって封鎖されたシリアの町ダラヤ。平穏とは程遠い環境下で、本に希望を見出した人々の生活を描くノンフィクション。活力と希望を与えることができる本。瓦礫の中から拾いあげた本で密かに作り上げた図書館はまさに希望の図書館。様々な本を自由に読める環境が、どれだけ平和で素晴らしいのかを思い出させてくれる本でした。2023/03/19