内容説明
2021年3月1日に107歳で逝去した孤高の美術家、篠田桃紅先生。本作は1979年にPHP研究所から刊行された同名の書籍を再編集、新装復刊したものです。処女作『墨いろ』が第27回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した1979年に発刊された作品で、随筆の分野でも現代の清少納言といわれた著者・篠田桃紅の瑞々しい感性にあふれています。5歳の時に父の手ほどきで初めて墨と筆に触れてから、ほぼ独学で書を極め、やがて美術の世界へ。1956年に単身渡米し、ニューヨークを拠点にボストン、シカゴ、パリ、シンシナティ他で個展を開催した先進性は現代女性にも鮮烈で、随筆にあらわれる感性も古びることがありません。本書では文字の偏にことよせて日々の思いを綴っていて、ニューヨークに遊びに来た従兄弟や友人との交流やホームパーティの様子、着物や食への思いなど、そのセンスに富んだ暮らしにも心がわきたちます。著者の手による初期随筆の中でも珠玉の作品です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mako
1
ことばになりにくい、そこはかとない気配に目を向け、言葉にしていったと感じる随筆。道を究めていく人の感性がほとばしる。こんな風に生きていった人もあるんだなあ。2021/11/07
ニコ
1
いろは歌の考察が良かった。言葉は甘美であるが、すべて否定で、「たれ」と出遭い、突き放され、夢と醒める。 便利さや人工物の否定には、ちょっと相容れないところもあるけど、「活字は形骸ではなく活きた字であり、記号でない機能を持ってしまっている」という一文は素敵だと思った。2021/10/03
みっくん
0
図書館本で版が違います。写真の方が好きかなぁ。でも、図書館のものは題字が桃紅さんのお作で、一長一短。 まだまだ若書きというか、文章を綴ることになれておられなかったのか、最近の作に比べるとちょっと読みづらい。あるいは、まだまだ、尖っていたと言うことなのか。 様子がいい、さまになる、こういった言葉と振る舞いが愛された時代というのは、もちろん悪いことも色々とあったのだろうけれど、今とは違う良さもあったのだろう。2021/11/08