内容説明
小学校に通わせてもらえず、日々の食事もままならない優真。男にばかり夢中でネグレクトを続ける母との最悪な生活のなか、手を差し伸べるコンビニ店主が現れるが──。虐待によって家族からの愛を受けぬまま思春期を迎えた少年の、乾いた心の在りようを物語に昇華させた傑作長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
440
桐野 夏生は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。貧困×毒母×虐待の連鎖を立ちきることはできないのでしょうか? 著者の作品だけあって、厳しい社会に埋もれ、主人公 優真が里親の下に立ち直るハッピーエンドでないのが哀しい。 https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=23167 2021/10/26
まちゃ
242
貧困と虐待の連鎖。またしても桐野さんに、救いのない現実を突き付けられました。貧困と虐待の中で育った子どもを支援することの難しさ、その困難さから目を逸らすことなく寄り添うことの大切さを問うていたと思います。凄い小説でした。/【装画】フランシスコ・デ・ゴヤ「砂に埋もれる犬」の一部。この絵の犬は、悪意にあらがおうとする人間の無益さ、不安と無力感を象徴している、といわれる。2021/12/26
いつでも母さん
229
桐野夏生の、最後に《放り投げられ感》が実は好きな私だが、今回第1章から全第4章までどこを切り取っても虐待とネグレクトに、いじめの連続でとにかくキツイ。子供に罪はないがそのまま成長して、負の連鎖は何処かで断ち切ることは出来なかったのか・・母・亜紀をどうしても受け入れられない私。また、その息子・優真に対してもどう対峙すればいいのか正直言ってわからないのだ。そう、この現実を前にして自分の情けなさだけが浮き彫りになる読書だったのだ。痛くて哀しくて行き場のない怒りと共に数日かかって読み終えた。2021/10/27
fwhd8325
228
面白いと言っては不謹慎かもしれないけれど、とても面白い。このラストには、驚きもあるけれど、よくよく考えれば納得のいくラストだと思いました。同じテーマの作品も多いけれど、別格の凄味があります。2022/06/17
のぶ
212
最近読んだ本で、これ程やり切れない読後感を持った本はなかった。主人公の小森優真は母親から育児放棄にあい、虐待も受けていた。小学校にも通わせてもらえず、日々の食事もままならない生活を送っていた。そこで助けを出したのはコンビニを経営している目加田。いろいろあった末に、優真を里親として育てる事になる。新しい生活が始まっても優真の問題行動は続く。登場人物にこれだけ問題のある人間をよく集めたものだと、ある意味感心してしまったが、ネグレクトを受けた心の傷は深い。こんな状況に桐野さんは一石を投じていた作品だった。2021/10/28