内容説明
目を覚ましたら、なぜか無人の遊園地にいた。園内には僕をいじめた奴の死体が転がっている。ここは死後の世界なのだろうか? そこへナイフを持ったピエロが現れ……(「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」)。僕らはこの見張り塔から敵を撃つ。戦争が終わるまで。しかし、人員は減らされ、任務は過酷なものになっていく。そしてある日、味方の民間人への狙撃命令が下され……(「見張り塔」)。現代日本、近未来、異世界――様々な舞台で描かれる圧倒的絶望。この物語に、救いの「カミサマ」はいるのか。見たくない、しかし目をそらせない、人間の本性をあぶり出すダークな短編集。
目次
伊藤が消えた
潮風吹いて、ゴンドラ揺れる
朔日晦日
見張り塔
ストーカーVS盗撮魔
饑奇譚
新しい音楽、海賊ラジオ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
283
深緑 野分、新作中心に読んでいる作家です。本書は、バラエティに富んだ神無月ダークな短編集、オススメは『伊藤が消えた』&『ストーカーVS盗撮魔』です。 https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/kamisama/2021/12/30
いつでも母さん
200
全てが暖かくスッキリ落ち着く小説ばかりを読んでる訳じゃない。悲しくて憤って、遣る瀬無くて・・そんな作品だって嫌いじゃない。だけど、私の気持は沈んだ水の底でグルグル回転し続けているような、混乱する何とも表し難いちょっと疲れる短編集だった。どれもこれも私の読解力不足故に読了に時間がかかる全7話だった。(人間の本性をあぶり出すダークな短編集と帯にある)申し訳ない。そんな読書もあると、次に進もう私。2021/10/18
のぶ
157
深緑さんの短編小説は初めて読んだが、長編小説とは随分印象が違って見えた。本作には6つの短編と1つの超短編が収められている。どの作品にも共通しているのは、時代と具体的な舞台の説明がなく、暗くて重い雰囲気が漂っている事。微かな舞台のヒントは現代日本、近未来、異世界で、それが無人の遊園地だったり、戦場だったりは展開されている内容で読み取れるが、絶望的な雰囲気が漂う。何だか世にも奇妙な世界に放り込まれているような感覚になる。救いのないものばかりだが、救いの「カミサマ」はいるのかはよく分からなかった。2021/10/18
美紀ちゃん
153
金巻芳俊さんの彫刻のインパクトがすごい。 7つの短編集。どれも怖い。 「伊藤が消えた」が1番印象的。 ゾワゾワ。 「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」黒焦げ死体、イジメ問題。誰もいない廃墟みたいな遊園地、夢? 「朔日晦日」目がゴマみたいにまだらに!怖い。 「見張り塔」戦争?味方を銃撃?上官が狂ってる。 「新しい音楽、海賊ラジオ」陸地が全部海に沈んだ世界!ラストは光がさす。 不思議な空間の少しゾワっとする話だった。 タイトルの通りという感じ。 2021/11/15
まちゃ
143
現代日本、近未来、異世界を舞台にしたイヤミス、ホラー、ミステリ、怪異など人間の闇をあぶり出すダークな7編の短編集。深野さんのバラエティーに富んだ作風に驚かされました。/【収録作】「伊藤が消えた」「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」「朔日晦日」「見張り塔」「ストーカーVS盗撮魔」「饑奇譚」「新しい音楽、海賊ラジオ」2021/10/18