暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ

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暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ

  • 著者名:堀川惠子【著】
  • 価格 ¥1,925(本体¥1,750)
  • 講談社(2021/07発売)
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  • ISBN:9784065246344

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内容説明

広島の軍港・宇品に置かれた、陸軍船舶司令部。
船員や工員、軍属を含め30万人に及ぶ巨大な部隊で、1000隻以上の大型輸送船を有し、兵隊を戦地へ運ぶだけでなく、補給と兵站を一手に担い、「暁部隊」の名前で親しまれた。
宇品港を多数の船舶が埋め尽くしただけでなく、司令部の周辺には兵器を生産する工場や倉庫が林立し、鉄道の線路が引かれて日々物資が行きかった。いわば、日本軍の心臓部だったのである。
日清戦争時、陸軍運輸通信部として小所帯で発足した組織は、戦線の拡大に伴い膨張に膨張を重ね、「船舶の神」と言われた名司令官によってさらに強化された。
とくに昭和7年の第一次上海事変では鮮やかな上陸作戦を成功させ、「近代上陸戦の嚆矢」として世界的に注目された。
しかし太平洋戦争開戦の1年半前、宇品を率いた「船舶の神」は志なかばで退役を余儀なくされる。

昭和16年、日本軍の真珠湾攻撃によって始まった太平洋戦争は、広大な太平洋から南アジアまでを戦域とする「補給の戦争」となった。
膨大な量の船舶を建造し、大量の兵士や物資を続々と戦線に送り込んだアメリカ軍に対し、日本の参謀本部では輸送や兵站を一段下に見る風潮があった。
その象徴となったのが、ソロモン諸島・ガダルカナルの戦いである。
アメリカ軍は大量の兵員、物資を島に送り込む一方、ガダルカナルに向かう日本の輸送船に狙いを定め、的確に沈めた。
対する日本軍は、兵器はおろか満足に糧秣さえ届けることができず、取り残された兵士は極端な餓えに苦しみ、ガダルカナルは餓える島=「餓島」となった。

そして、昭和20年8月6日。
悲劇に見舞われた広島の街で、いちはやく罹災者救助に奔走したのは、補給を任務とする宇品の暁部隊だった――。
軍都・広島の軍港・宇品の50年を、3人の司令官の生きざまを軸に描き出す、圧巻のスケールと人間ドラマ。
多数の名作ノンフィクションを発表してきた著者渾身の新たなる傑作。

目次

序章
第一章 「船舶の神」の手記
第二章 陸軍が船を持った
第三章 上陸戦に備えよ
第四章 七了口奇襲戦
第五章 国家の命運
第六章 不審火
第七章 「ナントカナル」の戦争計画
第八章 砂上の楼閣
第九章 船乗りたちの挽歌
第一〇章 輸送から特攻へ
第一一章 爆心
終章

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

132
旧陸軍が兵站を軽視して多くの餓死者を出したことは繰り返し語られてきたが、その陸軍で兵員や物資輸送を担当した組織や人については本書が初見だ。広島の宇品に設けられた船舶司令部「暁部隊」は最重要拠点だったが、輸送を顧みない組織にあって田尻昌次、佐伯文郎ら歴代司令官が重ねた苦労が痛いほど語られる。皮肉にもロジスティクスの鬼ともいえる米軍は陸軍首脳部よりも宇品の重要性を認識しており、だからこそ原爆は広島に落とされねばならなかった。被爆した市民救援に奮闘する船舶司令部の姿は、冷遇され続けた部署の最後の意地だったのか。2021/10/31

trazom

128
堀川さんの本は、いつも本当に素晴らしい。寡作であることは、それだけ一つ一つのテーマを徹底的に調べ上げ、資料を読み込んでいる証拠である。日清戦争以来、すべての戦争において日本兵を戦地に送り出した宇品。輸送や補給の重要性を理解しない陸軍幹部と宇品で奮闘する人たちの対照が、戦争の実態を浮き彫りにする。船舶司令官として毅然として職務を全うする田尻昌次中将、佐伯文郎中将や参謀の篠原優大佐の姿が胸を打つ。信念と優しさを持つ人が報われないのは世の組織の常ではあるが、堀川さんによって、また一つ、そういう人に光が当たった。2021/10/15

アキ

108
なぜ原爆が落とされたのが広島でなければならなかったのか?重要な軍隊の乗船基地つまり広島の宇品があることが理由のひとつであった。日本は環海であり、陸軍も兵站も船舶輸送が生命線である。太平洋戦争でアメリカは開戦後直ちに輸送船への無制限作戦を発令。戦争末期には年間ほぼ390万総トンの船舶損耗に及んだ。軍部は日露戦争での成功体験が兵站を軽視することに繋がったのかもしれない。陸軍運輸部勤務の田尻昌次中将、佐伯文郎船舶輸送司令官、船舶参謀・篠原優中佐の手記から原爆までの宇品、そして原爆投下後の広島中心部を詳細に綴る。2022/09/03

どんぐり

108
広島にはかつて日本軍最大の輸送基地・宇品があった。日清戦争から日露戦争、シベリア出兵、満州事変、日中戦争、そして太平洋戦争へと、この宇品を起点に日本の兵隊たちが戦場へと送り出された。原爆が落とされたとき、それまで海洋業務に従事してきた陸軍船舶司令部が、初めて海ではなく陸での活動を行った。本書は、この広島の陸軍船舶司令官たちの人間ドラマを描いたノンフィクション作品だ。なぜヒロシマに原爆が落とされたのか、なぜ海上輸送を海軍ではなく陸軍が担ったのかの問いから始まる。→2022/03/27

夜長月🌙@5/19文学フリマQ38

80
戦争と広島を語る一冊です。丹念に掘り起こされた戦争の記録は戦争の虚しさを強調させます。特に兵站の視点からの戦争批判は目新しく思いました。広島と戦争と言えば真っ先に原爆投下が思い浮かぶと思いますが歴史上、明治27年(1894年)に戦争の中枢部、大本営は東京から広島には移りました。悲惨な中では最後の原爆後の陸軍の目覚ましい救難活動は自衛隊の災害派遣を連想させました。2022/08/23

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