内容説明
故郷に背を向け、盟友たちと別れ、約束された成功を拒んだ。「男が惚れる男」が生涯をかけて求めたものは何だったのか。意外な素顔、大ヒット作の舞台裏、そして揺れ動く心中。発言の裏に秘められた本音を丁寧に掬い上げ、膨大な資料と関係者の貴重な証言を重ね合わせて「敗れざる男」の人生をまるごと描き出す決定版評伝。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Isamash
27
松田優作最初の妻で作家松田美智子2021年発行著書。菅原文太がインテリっぽい活動もしていて興味あり本書を手に取る。超名門と聞く仙台一高卒業生で、モデル出身、新東宝や松竹にいたということは初めて知ったが、不遇時代の長さや酒飲みで喧嘩早いところはイメージ通り。奥さんが大学教授の娘というのは、後年の活動考えると少し成る程と思った。やはり何と言っても、仁義なき戦いの菅原文太は凄いと思ったが、東映という会社の大きな流れの中で誕生してきたことを知った。また、彼が後年あのシリーズへの出演を嫌っていたことも初めて知った。2024/01/05
かずぼう
24
最後まで手抜きのない菅原文太伝。圧倒的に文太派のワタクシ。皆さん高倉健さん派?(個人リサーチによると健さん派7 文太さん派3かな)今回、改めて『仁義なき戦い』『トラック野郎』を視聴。うーん、いいね~。セリフがなくともそこに立ってるだけでカッコイイ、絵になる。短いセリフがまた決まる。『弾あ、まだ残っとるがのう』しばらくこれでいこう。 2021/08/16
まんだよつお
8
東北出身者特有の忍耐強さ、頑固さ、寡黙さ。幼い文太を置き去りにして出奔した母親の存在。『仁義なき戦い』と『トラック野郎』で東映の看板スターとなるものの、生来の不器用さが役者としての限界となって立ちはだかる。人付き合いの悪い文太ゆえ共演者が語る武勇伝は皆無だが、唯一、付き人が語るエピソードにのみ私生活の一端が垣間見える。長男を不慮の事故で失った文太の喪失感とそこからの復活。大好きな役者ではなかったが、圧倒的な存在感を感じさせる稀有な役者だった。そんな文太の全貌を知るためにも、フィルモグラフィーがほしかった。2021/07/19
田中峰和
7
東映のニューフェイスからスター街道まっしぐらの高倉健に対して、菅原文太には負のイメージが付きまとう。東北大に落ち、早稲田も昼間の学部はダメで夜間に入学。モデルの仕事に飽き足らず、映画会社もほとんど不採用で松竹に入るが、端役ばかり。転機は安藤組もと組長の安藤昇の東映移籍からおまけのように拾ってもらう。東映のヤクザ映画路線が当たり、「仁義なき戦い」で一躍スターダムに。晩年は最愛の息子を俳優にするため奮闘するが、踏切事故で亡くしてしまう。農業や政治に目覚めたのはその寂しさからか。健さんの後を追うような死だった。2022/09/09
tsukamg
7
文太の人生をピッチャーの球にたとえてみる。本作は、菅原投手の配球データをたっぷり頭に入れた著者が打席に立ったものの、どうしても狙い球を絞れなかったようなもどかしさがあった。批判的なツッコミが多かったのは、「普通、そこ投げないでしょ」というぼやきではなかったか。文太自身、矛盾のある性格だったのに加え、文子夫人との結婚でさらに変化の軸が変わり、ますます読めなくなったような印象がある。作家として内心忸怩たるものがあったかもしれないが、無責任一代読者としては、そうした矛盾でさえ俳優の魅力に映ってしまう。2022/01/18