内容説明
大学で言語学やロシア語を教え、時にはチェコ語で講演もする。スラブ諸語を研究する言語学者が何より愛するのは小説である。『犬神家の一族』を英語版で楽しみ、『細雪』のロシア人一家についてあれこれ推理。スウェーデン語に胸をときめかせ、物語に描かれる大学教授の人望のなさに溜息をつく。文庫版書下ろしエッセイ「長い長い外国語の話」も収録。言葉はきっとあなたの世界を広げる翼になる。(解説・林巧)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
65
外国語は中学以来の英語もそうだけど、全然身についていないので、黒田先生のように日々の努力家を知ると、正直すごいと思う。ただ無味乾燥な学習だけじゃなく、物語・小説を楽しむのも外国語とのつきあい方だと教えてくれる。何も原語で読めとまでは先生は言わない。日本語訳もしっかり読んで、あとで原語にチャレンジするのもいいらしい。ただ、長い方がいいとまで言われると、やっばり尻込みするなぁ。でもいいよね、チェコ語訳の星新一とか。「砂の器」や「スパイ大作戦」も登場する。こんな言語学エッセイ、今までなかったよね。(ついマネを)2021/04/17
雲をみるひと
31
数々の外国語を操る言語学者である作者による外国語をテーマにしたエッセイ。小説雑誌が出自ということもあり、数々の内外の小説や文学作品がリファーされている。インテリジェンスを感じさせるなかなか上質なエッセイだと思う。2022/08/26
瀧ながれ
23
ロシア語をはじめ、英語やウクライナ語、チェコ語やフランス語などを読んで会話する言語学者による、各国の言葉と物語のエッセイ。映画やドラマであらすじを理解した作品を原書で読んだり、日本の小説(犬神家の一族、細雪など)の翻訳版を楽しんだり、日本語訳と原書を並べて読み比べたりと、自由な楽しみ方をしていて羨ましくてならない。世界の名作の類は、わたしの頭では「翻訳」でひとまとめだけど、国ごと時代ごとの風景や習慣が織り込まれているのが当然で、その空気感まで味わえるのが理想なんだろう。日本語訳から心して読んでみるよ。2021/04/04
びっぐすとん
22
黒田さんの語学エッセイが好きだ。英語すら習得出来ない私には夢のような話。語学は素質もあると思うが、黒田さんは凄まじい努力の結果、多言語を習得されている。著者が言うように原語の文法通りに日本語訳がされていたら、邦訳と原書で該当する部分を参考にしながら読んでいくというのはかなり効果があるかも。若いうちに勉強するべきだった。振り返って『ウッホッホ探険隊』の章では日本語の変化にも驚いた。昭和の日本語すら今では使わない話し方になってる。語学学習にゴールはない。バベルの塔を作らなかったらこんなに苦労しなかったのに😭2021/04/21
Aminadab
21
4月に文庫になっていたのに先日まで気づかなかった。コロナ禍で書店から足が遠のいている証拠か。昔は大学の講読といえば教材は文学作品ばかりだった。反動で最近は忌避されがちだがそれも行き過ぎで、語学学習やブラッシュアップの材料にもっとフィクションを活用しよう、というのが趣旨。①翻訳書OK。外国語作品の日本語訳も日本語作品の外国語訳もどんどん使おう。②映像OK。ドラマシリーズで見てから原作に挑もう。③作品は大長編がいい。解らないところは飛ばしてどんどん読み進めよう。楽しいエッセイ仕立てなのは平常運転の黒田先生。2021/10/22