内容説明
本書は、東京藝術大学で実際に行われている講義に基づいて作られた西洋美術の入門書です。通史的に作品を概説するのではなく、著者の視点で選んだ個々の作品について、そこに込められたメッセージをわかりやすく読み解きます。クローズアップや補助線の導入など、読者の理解を助けるビジュアルも多用。楽しみながら、知らず知らずのうちに鑑賞眼が鍛えられることを意図しています。カルチャー・センターなどでは学べない作品も多数掲載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
122
東京藝大の「美術史概説」の15回の講義を一冊の本にしたもの。「東京藝大は美術に興味のある学生ばかりだから、一般的な通史を講義したところで誰も興味を持たない」とあるが、確かに、ここには、印象派もセザンヌもピカソも一切登場しない。詳述されているのは、ジョット、カルピンから、カラヴァッジョらを経て、ゲインズバラ、ナザレ派、ラファエル前派、ヴァン・デ・ヴェルデまで。一見偏った構成だが、互いの影響を解説することで、美術史が点でなく線に繋がる。表紙のロヒールを見て普通じゃないとは思ったが、異彩を放つ美術史本ではある。2021/03/28
どんぐり
93
古典古代に始まり、ジョット、ファン・エイク兄弟の初期ネーデルラント絵画からラファエッロ、レオナルドのルネサンス、バロックを経て、古典主義とロマン主義へと至る西洋美術の足跡をたどる東京藝大での講義15コマ。図録の写真と照らし合わせながら解説文を読む。これは読む楽しさというよりも、勉強に近い。興味がわいたのは、ブリューゲルの《子供の遊び》の絵で、ゼードルマイアがブリューゲル様式の「染み」と名付けた分析だ。遊びをする子どもたちが様々に描かれていて、画面全体をとらえると、→2022/08/21
syaori
70
「西洋美術史概説」の講義をまとめた本。ファン・エイクの≪アルノルフィーニ夫妻の肖像≫からメムリンクの聖母子やベラスケスの≪ラス・メニーナス≫を紹介して「鏡によって空間を補完し、交差する画面構成」の影響と発展を示し、カラバッジョとラファエロの聖母子の比較からルネサンスとバロックの違いを明示するなど、作品の影響や引用、比較により有機的な「西洋美術のネットワーク」を構築できるようになっています。またヴァン・デ・ヴェルデからバウハウスまでを扱う最終章では、美術史やそれを学ぶ意義も示唆されるなど充実した一冊でした。2023/03/10
kei-zu
69
東京藝大を舞台にしたコミック「ブルーピリオド」を読んでいるので、さぞや厳しかろうと警戒しながら読み進めたが、初心者にもわかりやすく古今の名作について説明される。さすがベストセラー。 絵画は歴史をもってつながり、また時代を超えて引用がなされる。ギリシャ美術から近年のモダニズムまで一気に読んでしまいました。 絵画の解説にご興味持たれた方は、「絵を見る技術 名画の構造を読み解く」(秋田麻早子)も是非。構図の意味など目からウロコです。2022/04/07
ちくわ
63
多くの方は絵画を直感的に楽しまれると思うが、ふと美術とは壮大な歴史と市場規模を持つ一大学問分野では?と考えた。小中は必修、高校でも選択可、歴史でも僅かだが美術史を学ぶし。そんな訳で美術の知識修得を目論む。 のっけから専門的過ぎてほぼ理解不能だったが、天才達の卓越した超絶技巧、時代と共に産まれた新技法、創造的で革新的な表現等、想像を遥かに超えた圧倒的スケール感の前に平伏しそうになった。余談だが…中学の頃、クラスのやや能面な女の子にアルカイック・スマ子と名付けた事を今になって恥じる。芸術を揶揄しちゃアカン!2024/02/17