わたしたちが光の速さで進めないなら

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わたしたちが光の速さで進めないなら

  • ISBN:9784152099860

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内容説明

廃止予定の宇宙停留所には家族の住む星へ帰るため長年出航を待ち続ける老婆がいた……冷凍睡眠による別れを描き韓国科学文学賞佳作を受賞した表題作、同賞中短編大賞受賞の「館内紛失」など、疎外されるマイノリティに寄り添った女性視点の心温まるSF7篇!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みっちゃん

170
とても私好み。ほぼ全編の主人公が女性。遥か未来に人類が獲得するかもしれない技術を描きながらも、柔らかな文章は妊娠や出産、我が子との相剋、そして他者を理解し受け入れる事とは、という問いを読者にかけてくる。独特の空気感が導きだす切なくも余韻を残すラストがたまらない。1番好きなのは表題作。朽ち果てた宇宙ステーションでコールドスリープを繰り返しながら、老女が待っているのは到達する手段が失われてしまった、夫と息子の住む遠い遠い星へ向かう宇宙船。「わたしには自分の向かうべき場所がわかっているよ」思いが溢れる。2021/04/07

buchipanda3

118
ゆるやかな語り口に乗せられるように、あれこれと人というものについての思案がすぅーっと駆け巡る。その揺らぎが結構読後に残った。それも穏やかながら叙情的な味わいに包まれながら。多くの先端的な技術が散りばめられた近未来社会が描かれるSF短編集だが、理屈ではない何か、人の素の有りようを思い出させられるような感覚がどの篇からも感じられた。テクノロジーの進化はむしろ人本来の割り切れないアナログな感性を露わにするものなのかも。感情を物性化するという発想が面白かった。あとサイボーグ化おばさんの解放感は何か分かる気もした。2021/03/25

星落秋風五丈原

105
スペースデブリの廃棄回収業者が、もう閉鎖されて何年も立つステーションから一向に立ち退こうとしない女性科学者アンナのもとを訪れる。アンナはかつてコールドスリープ技術を研究しており、夫と子供を先に惑星スレンフォニアに送ってから自分も続くつもりでいたが、ある事情により惑星へのルートは閉ざされてしまった。近未来の話ながら、効率第一主義の体制側と、声の小さい庶民が常にその犠牲になる現代社会の姿も垣間見える。「わたしたちが光の速さで進めないなら」2020/12/27

Apple

95
表題作は、宇宙の果てしない距離を感じさせる作品でした。壊れた宇宙ステーションにいるたった一人の老女の心の内が、なによりも宇宙に隔たれたことによる孤独を表現していて印象的でした。「わたしたちが光の速さで進めないのなら、同じ宇宙にいることにいったいなんの意味があるだろう?」宇宙開拓の進んだ世界の孤独を象徴するようなセリフだとかんじました。宇宙生命体と人類の関係に迫った「スペクトラム」「共生仮説」もすごい。科学の進歩、宇宙への進展が人の感情や性質をいかに具体化、顕在化するか、考えさせられました。2021/10/09

keroppi

86
韓国の若い女性が書いたSF短編集。設定そのものは新しくはなく懐かしい感じさえする。ただ主人公はほとんど女性だし、何かを失い何かを探す女性の心を優しく描いている。亡くなった人のマインドを保管する図書館で紛失した母を探す「館内紛失」が好みかな。2021/05/25

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