内容説明
帝国主義としての日本、民族主義下の中国、植民地下の台湾という三角関係を通じて生成される、日本統治下台湾人のアイデンティティに焦点を当てる。またヨーロッパ中心主義的な欧米のコロニアル/ポストコロニアル研究が陥った多くの問題を指摘し、世界各地で見られるアイデンティティ問題の理解について示唆的に論じた画期的書籍。
目次
推薦のことば
日本語版への序文
序 文
序 章 かつて「日本人」だった人々
第一章 台湾の植民地化――日本による植民地化、脱植民地化、コロニアリズム研究の政治学
第二章 絡み合った抵抗――関係性、アイデンティティ、植民地下台湾における政治運動
第三章 同化と皇民化のあいだ――植民地プロジェクトから帝国臣民へ
第四章 反乱者から志願兵へ――霧社事件と原住民をめぐる野蛮と文明の表象
第五章 「濁流の中へ」――『アジアの孤児』にみる三重意識と植民地の歴史学
参考文献
訳者あとがき
人名索引
事項索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
13
2001年にカリフォルニア大学出版部から刊行された作品の翻訳版。著者は台湾出身のデューク大学准教授。ポストコロニアル研究・文化研究の一環として植民地台湾のアイデンティティ形成に纏わる葛藤を、歴史や文化の面から考察している。特に『アジアの孤児』という文学作品を元に、植民地主義日本と民族主義中国に対する現出的な台湾意識の関係を奥深く論じた章は印象に残る。◇植民地研究は学問的には進歩したかもしれないが、研究成果を一般社会に波及させるには、成果物へのアクセスをもう少し容易にする方がよさそう。2017/11/23