ちくま新書<br> 村の日本近代史

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ちくま新書
村の日本近代史

  • 著者名:荒木田岳【著】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2020/11発売)
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  • ISBN:9784480073556

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内容説明

かつて村は「人間の集団」を意味する言葉であった。それが現在のように「土地」を意味する言葉に変わったのは明治半ばのことである。だが、その転換の起源は、秀吉の天下統一構想にまでさかのぼり、さらにその背景には地球上の土地を分割し囲い込もうとするような世界史的な転換があった。この間に起こった都市化・新田開発・分散知行、さらに廃藩置県・地租改正・地押調査から「明治の大合併」まで、村をめぐる土地と人の支配の紆余曲折を概観しつつ近代化の意味を再考する。

目次

はじめに
近代化とは何か
本書の構成
序章 村概念の転換
人間の集団を意味したかつての村
領域を表す村への転換──「人を通じた土地の捕捉」から「土地を通じた人の捕捉」へ
村があらゆる土地を囲い込む──市制町村制施行
村人の地位転換──「村の担い手」から「統治の客体」へ
第一章 村の近代化構想──織豊政権期
1 近代化と「天下統一」の課題
海外交易と戦乱の世
戦乱と奴隷交易
ポルトガルとスペインによる世界分割
イエズス会によるグローバルな金銀流通
信長・秀吉が目指した国内の平準化と統一
2 「天下統一」と村の再編
天下統一とは何か
秀吉による領知権と所有権の分離
太閤検地における度量衡の統一
石高とは何か
「村切り」による村境確定構想
土地の実態把握の限界
各地の旧慣の整理と独自ルール撤廃
身分制的規制としての刀狩り
領主以下の「土地からの切断」
第二章 村の変貌と多様化──幕藩体制期
1 幕藩体制下での権力分散化の進行
家康による「偃武」
転封の不実施と度量衡の混乱
権力の分散化とその指標
相対的安定期の到来とその背景
2 都市膨張による村の蚕食
職分による空間編制
江戸への人口流入がもたらしたもの
百姓地の蚕食
容認されていった田畑売買
拝領地と相対請地
身分制秩序の形骸化
3 新田開発のもたらした変化
「領域としての村」vs.「人間集団としての村」
検地帳による土地所有権公認
検地帳をめぐる混乱の背景
村の領域の変動
新田開発による村の増加
新田の検地帳登録
総検地と帳簿漏れの土地
帳外地の黙認
石高と実際の収量の乖離
生産拡大と米価低迷
4 石高制の帳尻合わせによる村の再編
飛び地や相給の増加
村の便宜的・属人的分割
自然村ではなかった幕藩体制後期の村
転封への領民の抵抗
開国要求と条約締結
第三章 村の復権構想とその挫折──明治初期
1 維新期における統治方法の転換
府県制と藩制の併存
版籍奉還
飛び地整理の難航
戸籍法における居住地編製主義への転換
町方と村方を超えた支配へ
2 廃藩置県と村の復権構想
廃藩置県と府県統合
府県統合の狙い
石高制と村請制の利用で可能になった貢租徴収
地方官の任命と士族の抵抗
雑税・藩札の整理と地所番号の誕生
近代行政の受け皿としての村の復権構想
3 村の復権構想の挫折と「戸長の時代」
明治初年の町村数データの不在
地域によって性格の異なっていた村
行政の受け皿としての「区」の利用
「大区小区制」から三新法体制期へ
村による「土地の囲い込み」の失敗
第四章 土地・人・民富の囲い込みと新たな村の誕生──明治中期
1 地租改正による土地の実態把握
土地の永代売買解禁
現状を追認したに過ぎなかった土地売買の解禁
近代的土地所有にまつわる歴史認識の問題
沽券・地券の発行
農村部で棚上げされた改租
困難をきわめた地券発行
地租改正の実際
石高制の廃止と土地丈量
改租作業における土地の実態把握
度量衡の再統一
2 地籍編纂と地押調査による土地の実態把握
改租による反別大幅増
土地現況把握への不満を抑えた「減税」
新たな土地のあぶり出しと囲い込み
境界確認作業にともなう村々の合併
県の指導による村の合併
地籍編纂作業
土地台帳の新設
更正図の設置
更正図をもとに作られた「地図に準ずる図面」とマイラー図
土地台帳規則と登記法制定
3 「明治の大合併」と市制町村制における転換
市制町村制の制定
土地の余白なき帰属のための町村大合併
郡を切り分けて作られた町村
市制町村制施行前に合併を強行した理由
「住民」の出現
行政区画としての村の再生
村の「法人化」
村の意思は国家の意思──機関委任事務
大きくそがれた村の自主性
村の概念転換と「自治体」という呼称
市制町村制施行後の国の動き
終章 「容器」としての村
村は支配の都合で繰り返し再編されてきた
秀吉構想の焼き直しだった明治の郡県化
土地を通じた人の捕捉へ──村の法人化
「容器」としての村にどう向き合うか
おわりに
参考文献・引用文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

てつ

33
新書サイズで読むのがもったいない良書。分量を圧縮せざるを得なかったのか、説明不足もあるのが残念。 人と土地を支配するために区域を設定することの難しさを政治的に、かつ、民俗学的に分析している。再読確実です。2022/08/29

浅香山三郎

12
村の概念は中世までは、人間の集団を意味してゐたが、秀吉政権は土地による領域的なカタマリを村として把握しやうとした。しかし、飛び地や都市化など、年貢の収取単位としての村は、実態とはかけ離れてゆく。本書では、「天下統一」を大航海時代の世界情勢に対する対応として、検地や村切りを捉へ、実態との合致を目指す長い過程を整理する。第3・4章を近代の行政機関としての村への歩みに充てるが、近世の流れ(実態からの乖離の進行)を述べた第2章は多様な村の形態に触れて興味深い。2022/10/28

穀雨

8
いわゆる明治の大合併以前の村境について調べてもなかなか情報がなく、不思議に思った経験があるが、そもそも当時の村は大地に浮かぶ島のようなもので、その境すらはっきりしていなかったという。そうした前近代の村が、明治時代にいかに変貌したかがテーマ。論文がもとなので若干難しく、また明治中期で終わっているので「近代史」というには中途半端だが、とても興味深い指摘が所々にみられる。地理好きにおすすめ。2022/09/03

keint

7
村の近代化や性質について、豊臣政権期から江戸幕府、明治政府の権力側からの視点でどのように形成されたかを迫っている。 当たり前と考えている村をシステム化する過程での検地や度量衡の違い、飛び地およびその整理などの問題があったことを知れた。2021/12/18

cineantlers

6
同テーマの本は松沢裕作氏の「町村合併から生まれた日本近代」以来。「村」は一体どこから生まれたのかを考察している。豊臣秀吉の「惣無事令」のあたりの批判はこれから多くあるだろうが個人的には「秀吉の意志を考えずとも結果的に」政策をまとめると惣無事令みたいな集権国家体制に近づいたのだろうと思う。村が貢租共同負担の単位でしか無かった江戸時代、新田開発は村人の様々な税制優遇措置であったが米の増産が米価の低迷を招き、飢饉や藩財政を圧迫した事実。それは村の貢租共同負担の存在意義すら揺るがした点には大きな驚きを覚えた2021/01/06

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