内容説明
美的判断は、対象の物理特性だけでなく、それを行う人の覚醒度や注意、学習や経験で得た記憶、さらには文化や社会などの外的要因に基づく、統合的な認知の結果である。どのような特性がどのような印象を喚起し、それはなぜなのだろうか。形而上学的な思索から心理学や脳科学的な成果まで、古典的研究と最新の知見を踏まえて答える。
目次
はじめに
第1章 美感とは何か
1.1 Aesthetic scienceとしての「美感」
1.2 主体と対象
1.3 美の実証的研究の始まり
第2章 美感研究:対象からのアプローチ
2.1 ゲシュタルト心理学からの展開
2.2 よさ(goodness)の定量化
2.3 隠れた秩序
2.4 SD法による研究:多次元からの印象把握
2.5 進化論および比較認知行動学からのアプローチ
2.6 アフォーダンスとデザイン
第3章 美感研究:主体からのアプローチ
3.1 バーラインの行動主義モデル
3.2 反転理論:評価の観点
3.3 単純接触効果
3.4 典型選好理論
3.5 典型的景観と構図のバイアス
3.6 状況の恒常性と確率論
3.7 処理流暢性理論
3.8 感情評価理論
3.9 感性多軸モデル:感情円環モデルの拡張
3.10 情報処理段階モデル
3.11 面白さの不適合理論
3.12 不快感・嫌悪感
3.13 普遍性と差異
第4章 色と形状の嗜好
4.1 美感と視覚的嗜好の関係
4.2 色嗜好
4.3 形状嗜好
4.4 嗜好研究の展開
第5章 対人魅力と美感
5.1 なぜ対人魅力研究が必要か
5.2 対人魅力研究の対象と語用
5.3 対人魅力に関する理論的枠組み
5.4 対人魅力の形成
5.5 魅力認知の時空間的特性
5.6 顔魅力に関与する形態的要因
5.7 対人魅力に関与するホルモンと内分泌神経系
5.8 その他の心理学的要因
5.9 魅力認知の脳内基盤
5.10 対人魅力の課題
第6章 美感の神経美学的基礎
6.1 脳神経科学としての美感研究
6.2 神経美学の枠組みとアプローチ
6.3 視覚芸術の情報処理過程
6.4 脳の機能特化と美術様式
6.5 美感の脳内基盤
6.6 美感の客観的特性と知覚関連性
6.7 今後の課題
第7章 美感と脳機能障害
7.1 美感研究における脳機能障害研究の位置づけ
7.2 脳機能障害が美感へ与える影響:感覚欠乏症
7.3 美感と大脳半球機能差
7.4 芸術家における脳機能障害と芸術表現
7.5 緩徐進行性神経病変と芸術表現
7.6 芸術家における感覚障害とその芸術表現
7.7 精神疾患における美感と芸術表現
7.8 美感研究における脳機能障害研究の課題
第8章 美感の時間特性
8.1 知覚と認知の時間特性
8.2 顔の高速処理
8.3 絵画のマイクロジェネシス研究
8.4 絵画鑑賞の時間特性
8.5 選好注視と視線のカスケード現象
8.6 比較的長い時間軸での印象の形成と変容
おわりに
引用文献
索引
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Yoshi
ばにき
ニッポニテス的遍歴