内容説明
痛烈な体験を抱え「カッコイイ戦争」に抗い続けた岡本喜八。不穏さを増す近頃、喜八の映画が再び光を放つ。
「戦争は悲劇だった。しかも喜劇でもあった。戦争映画もどっちかだ」。なぜいま、岡本喜八なのか。痛烈な戦争体験を抱え、フマジメな余計者として「カッコイイ戦争」に抗い続けた岡本喜八。喜八は誰ととともに何と戦ったのか。その遺伝子はどこに受け継がれているのか。不穏さを増す近頃、「人と人の争い」を描き続けた岡本喜八の表現が再び光を放つ。
【著者】
山本昭宏
神戸市外国語大学准教授。一九八四年、奈良県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。専門は日本近現代文化史。主著に『核エネルギー言説の戦後史 1945~1960――「被爆の記憶」と「原子力の夢」』(人文書院、二〇一二年)、『核と日本人――ヒロシマ・ゴジラ・フクシマ』(中公新書、二〇一五年)、『大江健三郎とその時代――「戦後」に選ばれた小説家』(人文書院、二〇一九年)など。
目次
はじめに
第1章 映画監督・岡本喜八の誕生――「カッコイイ戦争」のインパクトとその背景/山本昭宏
第2章 「フマジメ」な抗い――喜劇へのこだわりと「正しさ」への違和感/福間良明
第3章 「余計者」にとっての「明治」と「民衆」――時代劇から問う近代日本 /佐藤彰宣
第4章 誰とともに何と戦う?――「内戦」を描く岡本喜八/野上 元
第5章 キハチの遺伝子――喜八映画の影響関係と戦争体験/塚田修一
終 章 青い血とコロナウイルス――軍事とメディアによるスペクタクル/山本昭宏
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まんだよつお
5
若手社会学者が岡本喜八監督の戦争映画を取り上げて分析した論文集。岡本の戦争体験と戦争映画の関わりを読み解く。戦争のバカバカしさを描き厭戦・反戦を表現した『独立愚連隊』シリーズ、『日本のいちばん長い日』『肉弾』が描き出す終戦のヒロイズムとぶざまな最末端兵士の姿、戊辰戦争を昭和の戦争に連なる天皇制に基づく戦争と位置付けた『赤毛』『吶喊』の3テーマで論じる。中でも岡本戦争映画を「内戦」映画と捉える野上論文がいい。『吶喊』『沖縄決戦』はもちろん、『日本の…』も終戦と決戦との間の内戦を描いているとする視点は斬新だ。2021/02/03