内容説明
人体に、建造物に、蜜蜂に、チェス盤に――
隠喩で捉えられた社会像
中世ヨーロッパは教皇・皇帝という聖俗権力の下の階層秩序的な社会であった。人体諸器官に喩えれば君主は頭、元老院は心臓、胃と腸は財務官と代官、武装した手は戦士、足は農民と手工業者、そしてそれらは魂であるところの聖職者の支配に服する――ほかに建築・蜜蜂・チェスなどを隠喩として社会の構成と役割を説明する中世人の象徴的思考を分析。
目次
序章 隠喩による社会認識
第1章 蜜蜂と人間の社会
第2章 建造物としてのキリスト教社会
第3章 人体としての国家
第4章 チェス盤上の諸身分
終章 コスモスの崩壊
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Haruka Fukuhara
8
知的にとても面白かった。学術文庫に入る前に結構前に発表した文章らしく、著者いわくこの記述には自分で結構不満らしい。何か手頃な本があれば著者の新しい本も読んでみたい。中世社会を鮮やかに描き出していて圧巻。蜜蜂の話とか人間としての国家とか、本当に面白かった。2017/05/25
α0350α
5
蜜蜂、人体、チェスについての文書から社会観を考察するというのが面白いですね。当時の人たちがどんな考えだったのか興味深く読めました。2022/02/08
アカ
2
インノケンティウス三世の手紙が、うまいなぁ、と思いました。隠喩が分かるとぐっと面白くなる文章。 世俗関係はチェスがおもしろかった。蜜蜂の隠喩は進化論に似た何かを感じました…。自然科学ってこわいなぁ。2009/12/22
可兒
2
教会組織がミツバチにたとえられたり、チェスのポーンに八種類の職を当ててみたり、比喩がかなり自由。近代に受け継がれえなかった思考回路というのは、カンブリア紀の怪物たちのようで興味深い2009/04/07
鐵太郎
1
中世ヨーロッパの社会を、隠喩による社会認識として捉え、その社会を丁寧に区分けしてみたのがこの本です。この場合の「社会」とは、言ってしまえば身分制度です。日本の言葉で言えば 「士農工商とはなぜ、誰が、どのような根拠で、誰の権威により定めたのか」 と言えばわかりやすいですか。こんな理解で良いかな? ある意味では面白いのですよ、本当に。パズルのようなものですからね。宗教観による説明がいかに滑稽であるのかなど考えるとね。しかし、この本の書き方では、この世界に興味が持てなかった。残念。2008/07/20