講談社文庫<br> 七月に流れる花/八月は冷たい城

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講談社文庫
七月に流れる花/八月は冷たい城

  • 著者名:恩田陸【著】
  • 価格 ¥770(本体¥700)
  • 講談社(2020/07発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065197660

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内容説明

坂道と石段と石垣が多い町、夏流に転校してきたミチル。六月という半端な時期の転校生なので、友達もできないまま夏休みを過ごす羽目になりそうだ。終業式の日、彼女は大きな鏡の中に、緑色をした不気味な「みどりおとこ」の影を見つける。思わず逃げ出したミチルだが、手元には、呼ばれた子どもは必ず行かなければならない、夏の城―夏流城での林間学校への招待状が残されていた。ミチルは五人の少女とともに、濃い緑色のツタで覆われた古城で共同生活を開始する。城には三つの不思議なルールがあった。鐘が一度鳴ったら、食堂に集合すること。三度鳴ったら、お地蔵様にお参りすること。水路に花が流れたら色と数を報告すること。少女はなぜ城に招かれたのか。長く奇妙な「夏」が始まる。(「七月に流れる花」)

夏流城(かなしろ)での林間学校に初めて参加する光彦(てるひこ)。毎年子どもたちが城に行かされる理由を知ってはいたが、「大人は真実を隠しているのではないか」という疑惑を拭えずにいた。ともに城を訪れたのは、二年ぶりに再会した幼馴染みの卓也(たくや)、大柄でおっとりと話す耕介(こうすけ)、唯一、かつて城を訪れたことがある勝ち気な幸正(ゆきまさ)だ。到着した彼らを迎えたのは、カウンターに並んだ、首から折られた四つのひまわりの花だった。少年たちの人数と同じ数――不穏な空気が漂うなか、三回鐘が鳴るのを聞きお地蔵様のもとへ向かった光彦は、茂みの奥に鎌を持って立つ誰かの影を目撃する。閉ざされた城で、互いに疑心暗鬼をつのらせる卑劣な事件が続き……? 彼らは夏の城から無事に帰還できるのか。短くせつない「夏」が終わる。(「八月は冷たい城」)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

chantal(シャンタール)

80
女の子編の「七月」と男の子編の「八月」、合冊本。今流行りの病を思わせるシチュエーション。「七月」で、状況を理解した上で「八月」で更に深く掘り下げる仕組みだから、間違えて八月から読んだ人は何のこっちゃになってしまうね。電子版の合冊本で読んだけど300ページしかなくて、ほんとにちゃんと全部なのか?と心配。だって別々の本だとそれぞれ200ページ以上あるみたいだし。お話はそこそこ面白かったんだけど、そればかりが気にかかる読書だった😞2020/09/12

NADIA

78
恩田陸らしいホラーファンタジー。あんまり怖くないけど。後半部の『八月は冷たい城』は既読だったが、例によってほぼ忘れていたので新鮮に読めた。それにしても「伝染病で隔離されている病人の死期が迫るとその子供達が隔離病棟に隣接した施設に集められ、全員の親を見送るまで林間学校生活を強制される」とはまた無理のある設定だなあ。そして全身緑色の巨人「みどりおとこ」がこの世界に不気味さを添えているが、その「みどりおとこ」の正体がそれまでの静かな世界観を覆すエグさ。かなり強烈なのに、なぜ忘れていたのか自分でも不思議(笑)2021/01/25

annzuhime

61
恩田陸らしいホラーファンタジー。夏流城に集められた少年少女のひと夏の出来事。何も分からずみどりおとこに追われるところが怖い。お城での林間学校。これはどういうこと?って謎のまま終わるし、無理な設定も多々あるけど、全体的に漂う雰囲気が良かった。悲しくそしてゾッとする出来事。この城から1歩踏み出した少年少女たちが、幸せに生きられるといいなと思う。今までの恩田作品の中では、あっさり読めるダークホラーでした。2021/04/01

だまだまこ

56
「なつかしいという気持ちは 恐ろしい気持ちに似ている」そんな序詞から心を掴まれる。物語が始まる予感。何も知らずに連れて行かれる夏流城は、鐘のルール、水路を流れてきた花を数えるなど謎が多い。少女達の「7月」少年達の「8月」どちらも不安定な気持ちがすごくリアルだった。親を亡くす漠然とした怖さと、姿も見えないし葬式もなく実感がない、悲しむに悲しめない自分の言いようもない気持ちは、今のコロナでもありそうな状況でざわざわした。最後のみどりおとこの正体にはもう言葉もなく…ダークファンタジーという言葉に納得。2020/10/16

よしのひ

49
なんだろう?踏み込むのが恐い気持ちもありつつ、好奇心に負けて読み込んでしまう割合が高いのが恩田陸先生の作品だ。常識の世界観がありつつ、違和感が盛り込まれる。今回で言うならば「みどりおとこ」だが、少年少女ならではの気持ちが織り込まれているため、不思議と「恐い」だけではない読了感。自分の親がもし鏡の向こうにいて、自分が選ばれたなら、どんな気持ちで夏のお城に赴くだうろか。最後に同じ空間に居られることが子どもにとっての幸せにもなるのだろうか。…齢30の赤子には答え切れぬ深いテーマである。…うむ、これからも勉強だ。2023/05/12

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