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内容説明
世界各国と軋轢を起こす中国。その特異な言動は、中華思想、米国に代わる世界覇権への野心などでは説明できない。なぜ21世紀に入り、中国は海洋問題で強硬姿勢に出たのか、経済構想「一帯一路」を始めたのか――。本書は、毛沢東・鄧小平から習近平までの指導者の動向、民族特有の家族観、社会の秩序意識、政経分離のキメラ体制など国内の潮流から、中国共産党を中心とした対外行動のルールを明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
73
尖閣諸島問題・反日デモを始め理解不能な国。中国の報道官はさも当然といった顔で主張するだけ。日本人からは中華思想のように思えるが、19世紀に欧米に植民地化された「百年の国恥」の意識が強く、そもそも不当に奪われたもので、どの事象も陰謀論として解釈しがち、外部への強い不安感の裏返しであると分析する。日本の権威主義家族と違い、中国社会は家父長に絶対的な権威が集中し、部下同志は競争相手で協力はしない構図。習近平総書記の言動から潮流を読もうと必死になる。日本の常識とは違う精神構造。この隣国との相互理解は実に難しい。2020/03/03
榊原 香織
70
外婚制共同体家族制、がキーワードかな 中国の社会組織は家父長と息子たちの関係になるらしい。 前半面白かったが、後半息切れした2022/08/25
まふ
63
現在、世界中が「傲慢不遜」「覇権主義」と眉を顰めている中国の行動の背景にある中国人および中国共産党の考え方の今日に至るまでの行動原理を解説したもの。中国は2000年来、19世紀の初めまで家族から皇帝に至るまで親、臣民を子とみなす「外婚制共同体家族制」により成り立ってきた。皇帝は近隣諸国には朝貢、冊封を許し、自らは「徳」を以て鷹揚に対応するとともに、従わぬ者があれば厳しい罰則を課す、という「中華思想」で国を治めてきた。決して覇権主義を標榜していたのではなく、他国を侵略する意思はなかった。*2020/12/01
skunk_c
62
エズラ・ヴォーゲルの助手を務めていた著者が、エマニュエル・トッドの家族社会学の外婚制共同体家族制なる概念に依拠しながら、自らの中国生活や教員としての経験を生かして中国国家の行動原理を論じている。その当否はともかく、論としては非常に面白い。特にケーススタディの広西チワン族自治区、国家海洋局の動きによる実証の試みは、かなり刺激的だった。国内の突き上げから対外政策を変更した「弱腰」の胡錦濤時代より、「万能主席」の習近平の強力な権威下での日中関係の安定化という見立ても興味深い。新しい視点を得ることができた。2020/01/15
樋口佳之
60
中国の対外行動を捉えるとき…中国が外婚制共同体家族に根付いた社会秩序を持ち、家父長、つまり最高指導者の国内凝集力をバロメータとして、一定のサイクルで変化する社会だ、と考えていく方法/こんな事考えた事無かったし、家父長って言っても日本のそれとはまったく違う。/日本で高度経済成長を率いた元官僚と、中国でこれから経済建設を担う有望な幹部…の経験交流の場が生まれる。国家が主導して国民の経済成長を主導する日本モデル/日本はその後のモデルを創出できなかった訳で。習近平、ポスト習近平時代の中国はどうなるのだろう2022/10/05