内容説明
新発見史料で本能寺の変の謎を完全解明。
20年以上にわたって「本能寺の変」研究に取り組んで来た第一人者による決定版。2014年以降相次いだ新発見史料で日本史最大の謎だった本能寺の変の背景がついに解明の時を迎える――。
天下統一を目指した織田信長と対立する室町幕府将軍・足利義昭。義昭の指令のもとに全国に張り巡らされる「信長包囲網」。その最前線で活躍し、新参ながら出世レースを繰り広げたのが明智光秀と羽柴秀吉だ。両者は織田家宿老の地位を得て、それぞれ築いた派閥を基に、信長の目指した天下統一のために奔走する。
転機となったのは、対毛利氏政策。光秀主導の「対毛利和平交渉」が秀吉の巻き返しで方向転換。光秀にとっては「信長の裏切り」だった。さらに、四国の長宗我部氏を巡っても、信長は光秀の面子を潰す政策に転換する。一度ならず二度までも「信長の裏切り」に遭遇する光秀に、追い打ちをかけるように「遠国左遷」の情報が。
信長の承認のもとに積み上げてきた業績を2度にわたって反故にされた無念。死中の光秀は、生き残りをかけて、室町幕府再興にその突破口を見出す。
著者による「本能寺の変の三層構造」は必見!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
30
藤田さんの著書は何冊か読んでいますが、主張は一貫しています。断言はしますが根拠は示さないという小説手法ですが、派閥抗争に負けたために起きたクーデターというのはなかなか面白いです。2022/09/17
紫の煙
15
謀反に至った理由は、昔から言われていた怨恨説などではなく、織田家中における派閥抗争に敗れた光秀が、自らの生き残りをかけて起こしたクーデターであった。派閥競争の相手は、無論秀吉である。その背景を丁寧に説明し、説得力がある。それにしても、山崎の合戦に至る秀吉の神がかり的な動きは、黒幕説を唱えたくなるのも当然。役者が違うというわけか。2022/08/17
パトラッシュ
13
政界での派閥抗争は当たり前の話だが、信長政権でも例外ではないというのが以前からの著者の見立て。確かにそうだが津本陽氏の『下天は夢か』以来、信長の革新性と政治力の高さが一般教養のように浸透し織田家中の派閥争いを制御できないはずがないとの思い込みが、数多の歴史家が派閥論による本能寺の変勃発など思いつけなかった理由かもしれない。しかも本書は多くの史料を駆使して光秀の決起理由を解読しており、研究者らしく説得力が高い。むしろ光秀の敗因となった秀吉の情報収集力の高さと中国大返しの早さこそ、今後解明が待たれる点だろう。2019/12/25
nagoyan
12
優。鞆幕府論で知られる戦国織豊期研究者による光秀伝。光秀は旧幕府奉公衆や畿内国主大名を与力として加え織田政権第一の派閥を率いた宿老であった。その光秀が、信長の中国・四国政策の変化、宿老抑圧政策に直面し、鞆の足利義昭の離反工作にのったのが、本能寺の変であったとみる。本書の立場からは、光秀は天下を窺った訳でなく、主を信長から義昭に変えたに過ぎない。その点でも山崎合戦の時点で既にポスト信長政権構想を明確に描いていた秀吉に及ばなかった。義昭の使嗾にのって松永、荒木の轍を光秀も踏んだのは広義の畿内出身だったからか。2019/12/04
ジュンジュン
7
大河ドラマ関連本ながら、「本能寺の変」著者ならではの充実の内容。教養も忠誠心もあった光秀は、信長の改革に貢献したが、革命の段階(伝統の価値観の否定)に到り遂に背く。生涯を順に追いかけるが、信長家臣になるまでの前半生はほぼわからない。仕官した40過ぎから本能寺までは約15年。秀吉としのぎを削った後半生を最新の研究成果をもとに再現する。2020/03/25