内容説明
車種は? スピードは? 嫌なやつと同乗したら? 平安貴族の移動手段「牛車(ぎっしゃ)」とは、どんな乗り物だったのか。古記録や古典文学、絵巻物を素材に、乗り降りの作法、生きる動力=牛の性能、乗車定員やマナーなど、失われた日常生活を豊富な図版とともに生き生きと再現。牛車に魅せられた著者が、その魅力を余すところなく語るユニークかつ必読の書!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
68
【古典文学読解に、牛車の知識は必須だ】時流に合わせ、連れ合いとは『源氏物語』関連の話題が増えた。その中のひとつに「牛車」がある。「『うる星やつら』の面堂終太郎の妹・了子が学校に登場したっけね~」などと盛り上がりつつ、本書を楽しんだ。巻末に参考文献。2017年刊。因みに、「あとがき」にも『おじゃる丸』と『うる星やつら』が言及され、<世間とズレた感覚が持つ者が乗る、非常にスピードの遅い乗り物であろう。非実用的、時代錯誤、自己顕示、自己満足……こうした牛車にはさまざまなネガティブイメージが投げかけられる>と。⇒2024/07/19
さつき
65
王朝文学にはつきものの牛車についての手引書のような作品。牛車に様々な車種があり、身分に応じて乗車する車が違ったことなど、思いもよらない内容で面白かったです。通常は四人乗りで使用するところをみると、私が漠然とイメージしていたより、ずっと牛車は大きいようです。誰かと同乗する際の上座下座が決まっていたことも面白いです。源氏物語や枕草子などの物語も牛車のあれこれを理解すると、より世界観がわかりやすくなりそうです。2017/12/23
澤水月
52
源氏の六条御息所の車争いキモは敢えて身分低い者用の車で高貴な正体隠したため軽んじられ、更に他の低身分の者が威容誇示に借りてきた人員の後ろにまで追いやられたから屈辱増してたのか!目鱗。木曽義仲は乗降作法誤り800年笑われる…!単に移動手段でなく富と身分と奢侈欲でせめぎ合い。女房連が車から十二単の煌びやかな裾出す風情は何とダテ裾!着てない見せ用裾をぶら下げていた衝撃…。雨宿り用スペースに止めた牛車で側に宿直者いるのにこっそりカー●クの和泉式部!仲悪くても同車仲良しアピの政治術も…また古典読み返したく。2017/09/10
よこたん
51
“都市に生きる人々の視線は道行く車に注がれ、車種や車体の飾りなどを値踏みし、車のなかにいる人の権勢を推し量る。” 時代は違えど、乗り物で格好つけたい見栄張りたいは同じなんだなあ。題名や目次にそこはかとなく香るファンキーさとは裏腹に、面白いけどかなり専門的で熱く語られている牛車アレコレ。檳榔毛車(びろうげのくるま)、漢字テストに出ても多分書けないけど読めるようにはなった(笑) 牛車のマナー知らずで笑われる木曽義仲、他人事じゃないかも。平安貴族はヘナヘナしてるイメージだったけど、結構な健脚ぶりににビックリ。 2019/06/26
Kouro-hou
49
平安時代の日記や物語から見る牛車の実態を語る本。華やかな平安文化のイメージとして出てくる貴族の牛車は、牛や牛飼童(運転手)の維持費、戦で道が荒れたりと平安末期にはもう衰退していたそうな。江戸時代には牛車って何?状態だったのを源氏物語大好き松平定信が文献などを調査、復元図まで作ってくれたのが現在ドラマ等で見られる牛車の時代考証の元になっているとか。おお。平安文化解説ではお馴染み、藤原実資の「小右記」記述も多数原文解説付きで登場。政敵と一緒に乗って仲良しアピールや密談など平安貴族のカーライフ解説が面白い。2017/10/10
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