内容説明
スーパーや八百屋の店頭に並ぶバナナの九割を生産するミンダナオ島。その大農園で何が起きているか。かつて王座にあった台湾、南米産に代わる比国産登場の裏で何が進行したのか。安くて甘いバナナも、ひと皮むけば、そこには多国籍企業の暗躍、農園労働者の貧苦、さらに明治以来の日本と東南アジアの歪んだ関係が鮮やかに浮かび上がる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
goro@80.7
63
バナナに限った話じゃないのだろうけど、これは生産国フィリピンのバナナ地獄物語だな。そして日本人が開拓した麻農園とバナナ農園との関係を初めてしりました。昭和40年バナナはキロ当たり264円、令和元年255円で80%がフィリピンから来ている。価格が安定?しているのは消費者からすれば嬉しい事だが生産者の生活は変わってきているのだろうか?フェアなトレードになっているのか?本書は昭和57年発行。ドール、チキータ、デルモンテなるほどね~。食べてるだけじゃ分からないわ。今はどうなんだろう…。2020/05/29
harass
61
日本で安価で手に入るバナナは、最大の輸出国になったフィリピンでどのように作られるようになったのか、生産者に渡される利益などのルポ。60年台から日本市場を目当てに、現地にはない品種のバナナを育てる計画が立てられたという。国際資本の搾取と詐術的契約で生産者へは利益がごく少ないのだという(実例として売上の2%!)。悪名高い米国の古い綿花栽培などと似たような状況が続いているという。82年に書かれた社会学の名著だが、その後も彼らの状況は変わっていないと思われる。2017/02/05
AICHAN
39
図書館本。バナナといえば台湾だとイメージしていたが、フィリピン産のバナナが日本のバナナの大半を占め、その多くが米国資本の企業によるプランテーションで栽培されているらしい。「らしい」というのは、この本が数十年前に書かれたものだからだ。バナナは栽培・収穫が難しく、プランテーション従業員たちにとっては恵みの農業ではないらしい。儲けるのは経営側だけということらしい。フィリピン産バナナは日本向けに栽培されており、世界的に見るとエクアドル産のバナナが大半を占めるらしい。「らしい」ばかりでごめんなさい。2021/10/13
小木ハム
35
読んだら最後、スーパーで山積みされたバナナを見て『よっ!物価の優等生、栄養満点!』なんてピュアな目ではもういられない。私達は食肉を口にするとき、屠殺現場を思い浮かべる人がいるだろうか。同じく、バナナ農家に思いを馳せる事もほぼない。彼らの足には借金という名の鉄球が括りつけられ、経済的に余裕が生まれない無限貧困システムの中で生活している。『厳しい品質基準=生産性が低い』は道理だ。37年前の本なので現在はどうなっているか。少しでも待遇が善くなっていることを願ってやまない。この後はファクトフルネスに進みます。2019/04/26
Willie the Wildcat
35
私の毎日(ランチに持参!)の栄養源のバナナ。輸入の歴史は、何と100年以上!戦時戦略とIMFの影響力による自由化から、潜在ニーズを超える過剰供給。外資資本家と一部地元エリート層が利益受容する一方、労働者の収入と身分の不安定さが”業界”の現実を描写。贈答品から身近な果物となり、消費地と生産地での廃棄も増加・・・。読後、食への感謝を今一度考えさせられた。少なからず反省の念。2014/12/05