講談社文庫<br> 戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇

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講談社文庫
戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇

  • 著者名:堀川惠子【著】
  • 価格 ¥990(本体¥900)
  • 講談社(2019/07発売)
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  • ISBN:9784065163436

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内容説明

1945年8月6日、広島で被爆した移動劇団「桜隊」。著者は、その演出家・八田元夫の膨大な遺品を、早稲田大学演劇博物館の倉庫から発掘する。そこには戦中の演出ノートやメモ、草稿、そして原爆投下による悲劇の記録が書き残されていた。

八田が残した記録やメモには、大正デモクラシーの下で花開いた新劇が、昭和に入り、治安維持法による思想弾圧で、いかに官憲に蹂躙されたか。自身や俳優たちの投獄、拷問など、苦難の歴史が記されていた。さらに、桜隊が広島で遭遇した悲劇の記録――。8月6日、八田は急病で倒れた看板役者・丸山定夫の代役を探すため、たまたま上京中だった。急ぎ広島に舞い戻り、10日から仲間の消息を追う。「桜隊」9名のうち、5名は爆心地に近い宿で即死。仲間の骨を拾った八田は、座長であり名優と謳われた丸山定夫や美人女優・園井惠子ら修羅場から逃れた4名の居場所を探し当てるが、日を経ずに全員死亡。放射線障害に苦しみながらの非業の死だった。八田自身も、戦後、放射線被爆に悩まされることになる。16日、避難先の宮島で臨終を迎えた丸山の最期に八田は立ち会った。前日、玉音放送を聴いて丸山は呟いたという。「もう10日、早く手をあげたらなあ……」10日前、8月5日に降伏していれば。本書は悲劇の記録である。と同時に、困難の中、芝居に情熱のすべてを傾けた演劇人たちの魂の記録でもある。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

341
小山内薫と土方与志によって創立された築地小劇場からはじまり、戦後にいたるまでの新劇の歩みを演出家の八田元夫を軸に丹念に跡付けて行った労作。もっとも、著者の堀川惠子が一番書きたかったのは副題にも採られた「桜隊」の顛末であった。およそ新劇が宿命的に背負った歴史はそのほとんどが弾圧しようとする官憲への抵抗に他ならなかった。そして、それはそのまま八田元夫の個人史にも重なるのである。あるいは、桜隊がヒロシマでの被爆により全滅したこともまたそのことと深く関わっていた。すなわち追われ追われていった末での被爆だった。2022/12/02

駄目男

18
『無法松の一生』といえば村田英雄の歌でも有名だが、3度ほど映画化されている。初めは戦時中の昭和18年、阪妻こと坂東妻三郎が主演の作品で、二度目は昭和33年、三船敏郎主演の作品だが、以上二つは観たが、昭和38年の三國連太郎の作品は知らない。本来は昭和17年の舞台劇で、原作では『富島松五郎伝』という。この時に主演の松五郎を演じたのが名優丸山貞夫だが、もちろん私の知らない時代の話だ。丸山の演技は戦後、多くの人の記憶に深く残るようなもので、作家の近藤富枝は「観るたびに全身が痺れた」と感想を述べている。2023/03/10

どら猫さとっち

6
広島に原爆が投下された日、移動劇団「桜隊」が全滅した。そしてその演出家・八田元夫。彼は、数々の苦難や悲劇を生きざるを得なかった。検閲、投獄に投獄、そして原爆投下。彼の遺品から読み解く、知られざる人生と演劇への想い。その八田の姿を描ききった力作ノンフィクション。戦時下の演劇界で、激しく懸命に舞台に生きた俳優や劇作家たちがいた。彼らを襲った、戦争という悲劇に、胸が押しつぶされそうになった。戦争はこんなところに、鋭い爪痕を残す。改めて、戦争の恐ろしさと悲しみを考えさせられる名著。2019/08/09

コウジ

4
氏の著作3本目。原爆供養塔→暁の宇品と来て著者の取材力に脱帽し本作も購入。 舞台は完全な素人で戦前中となれば余計に無知。 治安維持法以降ご存知の通りの検閲、投獄、拷問、とファシズム一色の中 演劇人達は演劇(意に沿わぬ)をするか、しないかを迫られ慰問や国威発揚の道具として広島に送り込まれ被爆全滅。 本作の主人公たる八田は難を逃れるが仲間の安否を確かめる為 広島に赴き後に原因不明の体調不良から逝去する。 八田さんの「ガンマ線〜」と言う著作も気になる。 ケラリーノさんの後書きは軽過ぎと言わざるを得ないが仕方無し2024/03/23

コウみん

2
原爆で消えた悲劇の劇団『桜隊』。 その中で八田元夫は悲運の人物であった。 検閲、投獄、原爆。 昭和前期の芸術と戦争の中で芸術はいかに表現してきたか。 戦争の痛みと一緒に芸術性も消えてしまったある劇団の話だった。2019/10/17

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