内容説明
第43回大宅壮一ノンフィクション賞(2012年)受賞作。
ベストセラー『つなみ 被災地のこども80人の作文集』を企画取材したジャーナリストが描く、7つの家族の喪失と再生の物語。平成最大の災害を、子どもたちは「書くこと」でどう乗り越えたのか?「あれから八年間の日々に」を大幅増補。
解説・細谷亮太
「あの震災後、熊本地震や北海道胆振東部地震、北関東や西日本での豪雨災害など未曾有の災害が頻発し、日本中で自然災害で厳しい体験をする人が増えている。被害後をどのように生き、どのように克服していくかは、先人の声に耳を傾けるのがふさわしい。作文を書いてくれた子たちも、取材に応じてくれた家族たちも、おそらくは心のどこかでそんな思いをもっていたことだろうと思う」
(「あとがき」より)。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
69
被災した子ども達の作文を集めた「つなみ」、その中の6人と昭和の三陸大津波の作文を書いた女性に焦点をあてる。被災者と丁寧に信頼関係を築いた筆者だからこそ、知り得た実相。総じて書くことで救われ家族ともども前を向くきっかけになっているようだけど、一方様々な心の傷を負い立ち上がれない人々がいる現実。今年の3.11は、あの頃子どもだった青年が故郷のために頑張る姿を特集する報道を多く見かけた。あの日から13年。新たに造成された居住地。そして福島。人の暮らしは簡単には戻らない。「復興工事」は終わったのかもしれないけど。2024/03/12
saga
63
2013年に『つなみ 被災地の子どもたちの作文集』を読了していた。書店で偶然目にした本書。少しだけ語られる内容に不安を抱きながら購入。当時作文を書いた子ども達の取材過程を知ることができて良かった。増補では、被災地へ8年間通った森氏に入るSOSが語られる。荒れる子、自死を選んでしまった子、職を失った親の閉塞感、詐欺の標的にされた被災者……すべてがやるせない。震災から10年が経過し、一区切りついた矢先のコロナ禍。被災地、被災者の復興が停滞してしまう焦燥感を抱きながら読了。2021/08/19
hatayan
34
東日本大震災で被災した児童生徒が体験を記した作文集『つなみ』の舞台裏を明かす一冊。 見たままの様子を素直に綴る子どもの文章は国内だけでなく海外にも反響を及ぼしました。 終章では、被災から8年経った現地の様子を報告。住まいや仕事への不安を募らせる毎日は決して平坦ではありませんでした。作文を書いた2011年に高校生だった子は二児の父に。つなみの子は親になりました。 津波の被害を受けやすい低地に住宅が建ったのは漁師が高台に移るのを嫌がっただけでなく高度成長により土地が不足した事情もあったことなどが説明されます。2019/12/29
小豆姫
17
巨大津波が街を呑み込んでゆくテレビの映像を思い出しただけで胸が押し潰されそうに苦しくなるから、東日本大震災関連本は避けてきてしまった。ああ、そんな自分が情けない。これは子どもたちの作文なので読んでみた。あまりに大きな悲しみにふたをすればいつか溢れ吹き出してしまうから、言葉にして残すことで思いが伝わり広がってゆくのだ。子どもは希望。辛い現実のなか、みんなちゃんと明日を見てる。2019/03/25
マク
9
記録2019/04/24