内容説明
北海道の自然豊かなリゾート地、大沼。義父の別荘で暮らし、写真を勉強している敦史は、森を抜けたところで妖精が倒れているのを見つけた。黒髪に白い肌の美少女、有紀。知的障害のある彼女は、著名な画家の伯父とともに洋館に住んでいた。純粋な美しさに魅かれた敦史は、彼女をモデルとして写真を撮りはじめる。出逢うべくして出逢い、惹かれ合う二人を待ち受けるのは苛酷な運命だった。力作長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
366
まずタイトルからして馳星周らしくない。これでは川端か藤沢周平みたいだ。そして物語の舞台も新宿ではなく、北海道のそれも札幌といった都会ではなく、函館近郊の冬の大沼である。さらには発表誌も「小説すばる」と異例ずくめ。内容的にも馳流のハードボイルドは含むものの、本質は純愛にあり、本格的に雪を迎える前と最中との季節の移ろいの中で実に抒情的に描かれる。物語の結末は、かなり早い時点、パトラッシュとネロが登場する辺りで明らかである。しかし、そこに向けての破滅行は、馳星周の新たな側面を見せながら鮮やかに傾斜してゆく。 2019/11/14
えみ
57
こんなに残酷でこんなに美しい世界は未だ見たことがない。神様が本当に要るのならば、2人に何故このような出会いをさせたのか問い詰めたい。誰が間違っていたのか糾弾したい。雪深い地で深い悲しみと癒えることのない傷を抱える男女が巡り合う。この先過酷な運命が待ち構えているとも知らずに…。アマチュアカメラマンの淳史と知的障害のある有紀。真っ白な雪さえくすんで見えてしまうほどの純白な慈愛はこの世ではどこか歪に映ってしまう。だからどの角度から読んでもアンバランス。なのに短命の幸福だけは芯が通っていて揺るがないから不思議だ。2021/11/08
絹恵
26
傷痕や痛みほど強く惹きつけられて、壊れるくらい抱きしめてしまいます。互いを求めることで救われ、それでも降り積もった思いは淡く解けてしまいそうで、満たされるたびに不安が深くなります。天使の翼の黒いしみを妖精の純白の心で洗ったら翼はもう必要なくなりました。これは天使と妖精の神さまも知らない幸福な記憶───淡雪記。2014/05/26
IRIE
24
妖精のような美しい有紀に出会った敦史。 2人は惹かれあっていく。 なぜお互いに惹かれあってしまうのか、、悲しくも美しい物語でした。 ラストの敦史の言葉がああ·····あの時のと思い苦しくなりました。2019/11/27
ずっと俺のターン
20
もっとぐちゃぐちゃして欲しかった。2014/04/05