集英社文庫<br> 牛と土 福島、3.11その後。

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集英社文庫
牛と土 福島、3.11その後。

  • 著者名:眞並恭介【著】
  • 価格 ¥649(本体¥590)
  • 集英社(2018/04発売)
  • 5/5はこどもの日!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~5/6)
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  • ISBN:9784087457070

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内容説明

【第37回講談社ノンフィクション賞、第58回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)受賞作】東日本大震災、福島第一原発事故で被曝地となった福島。警戒区域内の家畜を殺処分するよう政府は指示を出した。しかし、自らの賠償金や慰謝料をつぎ込んでまで、被曝した牛たちの「生きる意味」を見出し、抗い続けた牛飼いたちがいた。牛たちの営みはやがて大地を癒していく―。そう信じた彼らの闘いに光を当てる、忘れてはならない真実の記録。

目次

序章 安楽死という名の殺処分
第一章 警戒区域の牛たち ――餓死でも安楽死でもなく
第二章 飯舘村の牛たち ――人も牛も姿を消した
第三章 飛散した放射性物質 ――土と動物の被曝
第四章 放れ牛と牛飼いの挑戦 ――牧柵の内と外……牛の生と死
第五章 ふるさとを遠く離れて ――牛の時間と人間の時間
第六章 牛が生きつづける意味 ――牛飼いを支援する研究者
第七章 被曝の大地に生きる ――家畜と野生の狭間で
第八章 帰還困難区域の牛たち ――牛が守るふるさと
第九章 検問を越えて牛の国へ ――牛が教えてくれたこと
終章 牛と大地の時間
文庫版あとがき
参考資料

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

368
単行本の出版は2015年3月。震災と原発事故から4年後。これらを扱った本や報告は多いが、本書のユニークな点は牛にスポットを当てたこと。この地域には肉牛(乳牛を育てる酪農家もいるが、中心は肉牛)を生産(子牛を生ませて肥育農家に)する農家が多数あった。幸いにも震災そのものの被害はさほどでもなかったのだが、問題は原発の放射能である。人間もそうだが、地域で飼われていた牛たち、そして牛の飼料たる牧草はすべからく汚染することになったのである。牛とともに生きてきた人々の苦難は察するに余りある。みんな牛を心から大切に⇒2019/08/22

しいたけ

123
被曝した福島の牛飼いたちのノンフィクション。殺処分を命じた政府に従わず、牛に餌を届け続ける。感情だけではない。牛が生きる意味は、故郷を人の住む場所に蘇らせる道筋にも通じる。動物愛護団体の手出しが、多数の牛を殺してしまった例も載っていた。逃げ道として主張した被曝の研究対象であるという一文にも噛みつかれる。仕方ないではないか。原爆投下時の記録しか頼るものがなかった研究なのだ。運命は牛と共にあるとする男の考えは愛護では測れない。迷いつつ進む文が、終章で一転する。記録に徹した筆者から溢れ出た思い。土の香りがした。2018/03/03

hatayan

42
原発の近くで飼われていたために、福島原発事故で被曝した牛たち。売り物にならない家畜を殺処分せよと指示する政府に抗って、心ある農家は牛を家族の一員として守り、被曝の証人として生かす道を選びます。人が住めなくなった大地で牛を放牧することで100年後でも自然環境が保てないか長期的な構想を描く研究者。牛を生かすことを頑として認めない政府。警戒区域の立ち入りを繰り返す中で、牛は食べた草から乳や肉を生み出す大地の恵みそのものであることに著者は気づきます。原発事故がもたらした、理屈では割り切れない感情を伝える一冊です。2020/03/25

James Hayashi

34
震災後、多くの牛が被災地に残され、餓死したものもいるが、国から出された指示は安楽死(その補償は無いという)。しかし一部畜産家は売り物にならないものを知りながら指示を無視し飼い続ける。牛も家族なのである。本作は畜産家の意見に聞く耳を持たず非常な指示を曲げずにいる政府に対し、極少数の畜産家が牛と共に歩む道を著者が被災地に入り探る。牛が食べる草は土が育て、死した牛は土に帰る。この循環に我々人間も含まれる。人間が作り出した原発から人間は逃げることができるが、土や動物は逃げる事を知らない。→2020/06/30

来未

17
あれから13年。福島に住む者として東日本大震災原発事故は忘れられないことである。 避難を余儀なくされた畜産農家の方や家畜として生きる動物たちの話は断片的には聞いていたが、ここまで詳細を知ると心が痛くなる。家族同然の牛たちの存在、産業動物としての市場価値の消失、存在する意味、そして安楽死の選択…畜産農家の方の葛藤は計り知れないものだったろう。被爆した牛たちの存在意義を探りながら前向きに牛と向き合い、土地の維持再生への道、被爆被害の研究といった役牛としての道を見出したのは牛への愛そのものだったのだろう。2024/04/06

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