内容説明
世界政治の最大の焦点は宗教! いま起こっているのは「新冷戦」ではない。
ウクライナ危機の深層、現代ロシアと宗教との関係、国際秩序の変容を文明論、歴史的視点から解き明かす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kazuo
9
91年のソ連崩壊後に、宗教改革から始まった政治統合が逆転したように民族と宗教の立場が強まっている。その一方で、欧州で発生したようなキリスト教組織をベースにした保守政党がなぜか発生していない。ロシアの経済面での最大のライバルは、実は石油産出国であり、中露は利害が一致するもののロシアは中国の文化やソフトパワーに関心がない。我々は現在のテクノロジーでも中国に追いつかれた中、決して「中韓は嫌い米露は好き」のような大雑把な議論で国際社会について考えてはいなけない。事実に基づく議論だけが日本の未来を作っていく。2018/01/08
だろうぇい
9
著者は「プーチンのロシア」を文明論的に読み解き、その本質を「正教大国」と喝破する。チェチェン紛争でもシリア内戦でも、反プーチン側から接する機会が多かったので、正教の歴史から説き起こし、ロシアの保守主義の論理を内側から読み解く視点は新鮮。だが、入手可能な情報という点で仕方ないが、プーチンとロシア正教の繋がりは傍証に頼る面があるのに対し、終盤のエネルギー戦略は非常に明解な解説なので、現在のロシア外交を理解する上での鍵はやはりこちらではないかという感覚が残る。世界の「政治と宗教」の潮流の理解の助けともなる一冊。2017/07/10
Happy Like a Honeybee
9
ドストエフスキー「罪と罰」は1666年の宗教分裂の分離派(ラスコリニキ)に由来する。 多民族国家であるロシアに純粋なロシア人は存在せず、ロシア正教が多様な民族の連結点である。また政府や軍隊マスコミに不信感を広がる中、教会宗教の役割こそ国民を束ねる手段を果たしている。 トランプ政権誕生後、米国とロシアの関係はどのように進展するか。国際政治に関心が高まるばかり。2017/02/12
kenitirokikuti
5
図書館にて。半分ほど読んだ。私も冷戦末期育ちゆえ、ロシアについてもソビエト連邦が理解のベースとなるのだが、ソ連はモンゴル族によるユーラシア東西を結ぶ大帝国の末裔であって、「ルスキー」とは何か、という概念は、ウラル山脈以西…突き詰めると、キエフとモスクワの関係性の問題になる。スターリンの定義する民族は、「言語、地域、経済生活および文化の共通性のうちに現れる心理状態の歴史的に構成された堅固な共同体」であり、宗教が入らない。2022/02/26
とろ子
4
「ルーシ(=キエフ大公国)」はもとはといえば今のキエフを中心に出現し、ウクライナ・ロシアの文化的祖先となる 988年キエフ・ルーシのウラジーミル大公が受洗、ウクライナとロシアの共通の宗教的ルーツとなる 1453年イスラム教徒によって東ローマ帝国(第二のローマ)が滅ぼされる モスクワはローマ教皇との統一を拒否「第三のローマ」化する(古儀式派) 18世紀初めに誕生したロシア帝国(ロシア正教)は首都をサンクト・ペテルブルクとした(「第三のローマ」たるモスクワ(=古儀式派)が首都では具合いが悪かった)2022/07/13