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内容説明
「絢爛豪華」な神話都市ハリウッド。その栄光を支えた撮影所システムは、第二次世界大戦後、不意に崩れ始める。アメリカ合衆国との闘いをはじめ、時代と不幸な関係を結んだ「1950年代作家」たちが照らし出すものとは何か──。いまや映画批評において不可欠となった諸概念とともに描かれる歴史は、ハリウッドにおける決定的な変容を浮き彫りにする。アメリカ映画が抱え込んだ問題を剔抉し、作品を見定める視界を開く独創的映画論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
82
1993年の単行本の文庫。この著者の非小説エッセイ本は初めて。正直、怖気づいていたのだが、思ったよりも読みやすく興味深い内容だった。ハリウッド映画制作の歴史から、「B級映画」とはなにかとその擁護などを考察。アルドリッチやゴダールやクリント・イーストウッドなどがなぜ批評家に絶賛されるのかがようやく分かった気がする。オススメ。『ここで奇妙な転倒が起る。システムとしてのハリウッドの崩壊は、「ヘイズコード」消滅によって加速され、初めて映画を「たんなるビジネス」にすぎない「見世物」にしてしまったのである。』2018/06/18
mm
27
何重もの好条件の重なりの中で、ハリウッドは神話都市であり、その中で生まれたB級映画。条件が変化すれば、当然生存不可能で、もう存在しないB級映画。あまりに呆気なく単純であるが故に、その取りつく島が無くて置き去りにされる感覚に幻惑されるという、B級映画を観る喜び。これが何によって蝕まれていくのかというプロセスがひしひしと、ひたひたと迫ってくる。そして、B級消滅後、映画を巡る背景はまた変化して、視覚的快楽に走ってしまう。物語を効率よく語り、見る機能を抑えたハリウッドの伝統は、視覚的スペクタクルの前に消え去る。2021/09/19
しゅん
17
物語作家としての蓮實重彦の魅力が詰まった一章の歴史記述が素晴らしい。「絢爛豪華なハリウッド」のイメージの裏には、映画システム崩壊の歴史がある。三人の映画作家を中心に綴られる物語の中で、ハリウッドがアメリカ合衆国の暴力からどれだけ映画を守ろうとしたか、そしてどのように破れたかが鮮やかに示される。「B級映画」の厳密な枠組みを探求する二章と合わせて読めば、典型的なアメリカの資本主義文化と思われがちなハリウッドという記号の意味が再編されていくだろう。教育的、かつ蠱惑的な一冊。端的に、めちゃくちゃおもしろい。2017/12/24
蛸
14
50年代作家たちの「悲劇」を記した一章目から頗る面白い。ハリウッドをハリウッドたらしめていた本当の意味での「B級映画」について。ヘイズコード以前と以後で何が変わったのか。ヘイズコードによって成立していた反視覚的な古典ハリウッド映画に関しては(それに先立つ初期映画がどれもこれも見世物的でしかないことを考えると)むしろ映画史的には歪なものでしかないようにも思える。66年以降の視覚イメージ優位のアメリカ映画はむしろ原点回帰なのではと思ったりした。蓮實節は控えめで研究者としての役割に徹しているという印象。名著。 2017/11/18
£‥±±
6
実は昔テンプラ学生として蓮實教授の映画評言論を何度か聴講した事が有る。所謂蓮實節と言う般若心経だが意識の流れの様な難解な文章ではなく、講義調の本作は読み易く、啓蒙的な内容だった。久しぶりに読み返して、書かれている映画の事が少し理解できるレベルになった事が解った。初見時は鑑賞映画の絶対量が少な過ぎたのだ。ブロードウェイやIVCのDVD-BOXに感謝。2019/02/01