内容説明
劇的に進む高齢化、異常な男女比率、一三〇〇万人の無戸籍者、そして、家族も蓄えも持たない「絶望老人」は増え続ける――。残酷な社会実験「一人っ子政策」がもたらした疲弊と苦悩をピューリッツァー賞受賞記者が圧倒的なリアリティで描く。「中国の最大アキレス腱」をえぐる驚愕のルポルタージュ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
88
中国の一人っ子政策について。社会実験として行われたこの政策がもたらした災禍が描かれている。ただ子どもの数を制限するくらいしか認識がなかったが読んでゆくうちに様々な問題を産み出したことを知った。急激な高齢化による労働者不足、男女の数がアンバランスによって起こる矛盾、人身売買や無戸籍者の増加、「小皇帝」と呼ばれる子どもたちの成長と課題など。しかし日本も他人事ではないと思う。経済格差で未婚者の増加と子ども不足と高齢化。国策でなくとも自然に「一人っ子政策」に向かっているような気がする。少子化対策大丈夫かな・・2017/10/26
キク
64
来年には中国の人口減少が始まり、日本を超える速度で少子高齢化が進むと言われている。各国が必死に出生率を上げようとするなか、2015年までの35年間、中国は「一人っ子政策」を徹底した。女児の中絶が大量に行われ男女比は歪になり、2人目のため戸籍を持てず社会的に存在しない闇子と言われる人々が1000万人以上いると推測されている。文革の混乱で出生率どころか総人口さえ分からず、粛正で社会学者が生き残っていない中「とにかく人が多すぎる」という軍人の感覚で政策は推し進められた。馬鹿な社会実験に巻き込まれる人生って悲劇だ2022/08/28
おさむ
34
2013年まで一人っ子政策が建前上は続いていたとは!極めていびつな男女構成比を生み、一気に高齢化社会の到来を招いた天下の「愚策」であり、世紀の「大社会実験」。その現場をつぶさに歩いて実態を描いています。人口警察なるものの存在、強制中絶、推定1300万人の無戸籍者などディストピア小説も顔負けの壮絶なエピソードが読ませます。著者は中国系アメリカ人女性なので、中国への憧憬もうっすら感じられる点が唯一の救いでしょうかね。2017/12/06
kawa
18
中国人には、あの世まで財産を持っていくことや、子孫がいる限り永遠にあの世で暮らせると言う死生観があるのだそうだ。そういう意味で、子孫を残さないことは最悪なこと。そんな国において80年代から実施されている「一人っ子政策」の衝撃のルポ。この政策で戸籍を持てない「闇っ子」が1300万人もいると言う。この政策を、共産党が犯した最大の破壊行為と筆者は評する。今、予想以上の老齢化社会の進行で軌道修正が図られている。しかし、「親になるということを合理的に考える」ようになった親たちにより思うようにいかないと言う。2017/11/24
BLACK無糖好き
15
著者は中国系アメリカ人ジャーナリスト。中国の一人っ子政策の導入経緯から、その実施状況や社会への影響まで多面的に描くと同時に、人口政策を全国規模で断行できる中国の独裁的な政治構造と社会的・文化的な土壌も浮上させている。今後予想される急激な高齢化や様々な副作用についても個々の事例を交えて取り上げている。歪んだ男女比率から独身男性が急増、等身大ラブドールを購入した息子に心を痛める同居の母親の話など、あまりの哀れさにいたたまれなくなる。著者が苦労の末、二つの小さな命を授かる最後のエピローグで少し救われた。2017/10/24