内容説明
「自業自得」「業が深い」「非業の死」……すでに日常になじみ深い“業”という言葉は、仏教思想に由来する。「自らが為した行為の結果は自らが引き受けなければならない」を基本の考えとする業の思想は自己責任的な性格の強いものであり、また、善をすすめ、悪を避けるように促す道徳思想としての一面を持つ。しかし、世の中では必ずしも善人が幸福に、悪人が不幸になるわけではない。では、業の思想はいかにして多くの人を納得させつつ、仏教の教えであり続けたのか。その歴史と論理をスリリングに読み解く!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
in medio tutissimus ibis.
3
理想と現実の差を理想の縮小により埋めることで苦を克服せんとする仏教において、不可避にして不相殺なる善因楽果・悪因苦果の自業自得を原則とする業思想は、廃悪修善を掲げ俗世間との関係を保ちつつ修行と解脱の因果関係を支える主観的事実として機能する。解脱の前提となる輪廻との矛盾は客観的には存在し、伝統仏教(初期+部派)では時間的に、大乗仏教では空間的に(廻向など)と受容形態に変遷もある。然し乍らその本質は、身口意の業とその結果を常に省みる事を要請する処にある。子日、視其所以、觀其所由、察其所安、人焉痩哉、人焉痩哉。2019/10/29
Go Extreme
2
インド仏教の歴史と典籍 インド宗教・業思想: ブッダ以前 ブッダ在世当時 伝統仏教の業思想―総論: 業思想の原則・背景 業思想の変遷 伝統仏教の業思想―各論: A群・どのような業を B群・身体のどの部位を使って行い C群・その結果どうなるのか ブッダと業: 仏と法との関係 ジャータカに登場するブッダ アヴァダーナに登場するブッダ 大乗仏教の業思想: 自業自得を超える空思想 浄土教における業の問題 業の社会性 業思想と現代社会: 差別 世襲化 振り返らない 責任を取らない 身体性が欠如 仏教の業思想とは2017/01/15
ところてん
0
仏教で重要な位置にある「業」の思想について、その発生の社会的背景から分かりやすく解説されています。仏教は非常に合理的なものであり、仏教は非常に合理的なものであり、差別問題にも触れながら、「業」をあくまで主観的にうまく扱う必要があるとされます。現代の環境問題や身体性の問題にも言及されており、著者の問題意識も感じられます。2017/03/18
hihuhihu
0
原始仏教の基礎的部分から客観的に解説してくれて非常に分かり易かった。大乗仏教の辺りが若干理解しがたかったけれど、恐らく私の勉強不足。最後に現代社会と業について(ここからは多少著者の思想も交えて)語られる過程で、業思想の危険性(差別への発展の可能性)についても触れられていたのが非常に良かった。ちゃんと学び、人にも教えられるようになる本だと思う。本棚においてしばしば読み返したいと思える一冊。2018/07/30
Myrmidon
0
仏教の「業」思想に関する概説書。中立的な立場から、伝統仏教(初期の仏教・上座部など)から大乗仏教に至る歴史的・思想的背景も含めて説明する。主張の相違や矛盾点も無理に(護教的に)理屈づけせず述べるので、納得しやすい。伝統的な「自業自得」から大乗の「自利即利他」に至る理論的部分がスッキリ理解できたのは収穫。最後辺りの「現代社会」への適用はどーでもいいが。2018/05/11
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