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内容説明
ポスト構造主義を代表する哲学者、ジャック・デリダ。ロゴス中心主義が「まったき他者」を排除・隠蔽してきた歴史を暴き出した尖鋭で長大な問いかけは、我々に影響を与え続けている。脱構築、散種、差延をはじめとする独創的な概念を生み出した思想の核となる「哲学的」モチーフをとらえ、彼が呈示した「他者との関係としての正義」を潜在的・顕在的に追究する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
29
『パイドロス』にある「プラトンのパルマケイアー」を引いてパルマコンとエクリチュールの関係を展開させている第2章が秀逸です。パルマコンが哲学者か魔術師か分からないソクラテス(父)を殺すのですが、このパルマコンとは薬であって同時に毒である決定不可能な存在です。父の不在性、決定不可能性は、一旦文脈を離れるとその意味はAにもなり非Aにもなり得るという観点ではエクリチュールの問題とパルマコンは同義です。現前の言葉(ソクラテス)であるパロールと不在の言葉(プラトン)であるエクリチュールの二項対立において、実はパロール2020/10/25
またの名
14
仮名で本を書いたキルケゴールの話が他者への絶対的責任を果たすのに必要な無責任の例だと言われると、ネットの匿名性は何なのか気になって謎。少なくとも著者がデリダに認めるアポリアは、他者を語ることで応答責任を遂行する身振りが実は言語等で共有できる一般性に他者を還元する暴力と常に表裏一体であるため、単純に他者万歳を唱えれば片付く問題ではないのが肝。パロールが威張ってるのでエクリチュールを持ち上げようとか、法は脱構築可能だけど正義は脱構築不可能だから最強とか考えるだけでは済まないことを思い知らされる、倫理的な解説。2015/12/24
なっぢ@断捨離実行中
11
再読。よくここまで噛み砕いて説明できたな、という印象。スピヴァクのあの晦渋な序論とは天と地ほどの差がある。まとまったデリダ入門書は本書と仲正のくらいしかないので大変有り難いのだが、デリダの思想をパフォーマティブに示せているか、と問えば当然否。しかし、言語の不可避的な暴力性を著者は充分自覚し「最小の暴力」にコミットしているので若干の戸惑いを感じつつも評者は「ウィ」と応じたい。デリダが今後とも読まれるにはこんな優等生的なデリダ像も、著者のような凡庸な教師も必要なのではないか。他者への責任を果たすためにも。2017/03/14
Happy Like a Honeybee
8
法は脱構築可能だが、正義は脱構築不可能か?デリタの生涯を時系列で展開する内容。哲学、言語、法・政治、宗教など…。基礎知識があり、様々な解釈を必要とする人向け。読み手を選択するような。私は第三章あたりから厳しかったが、挑戦する姿勢が重要2016/07/18
柳田
7
デリダは、ずいぶん毀誉褒貶の激しい人らしい。ポストモダニズムの代表とされる人物で、その思想は解説書であっても難解である。その真価は当然理解できていないし、素朴な「理解」なるものを拒む思想らしいのだが、どうも馬が合わなそうだなと思った。言葉はできるかぎり明晰にした方がいいと私は思っているし、ロゴス中心主義を批判するのはいいが、それで表現芸術みたいになってしまっては学問的な議論はできなくなるんじゃないだろうか。音声中心主義批判などは、論点としては面白いし、ルソー論だし、経験的に共感するところもあるのだが…2018/03/18