内容説明
衣服は、いつの時代も、着用している人物の位や性格など、様々な情報を示してきた。『源氏物語』『枕草子』などの作品の記述を手がかりに装束の記号性を読み解き、作品の新たな解釈と古典を読む楽しみを味わう!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆずきゃらめる*平安時代とお花♪
31
平安朝古典シリーズの著者・川村裕子さんの平安文学でみる装束も実態。ほとんどが夫、子供の着物に関する文を抜粋し装束に込められた想いと制作時間の大変さ。装束を制作するのはいつも突然・・。2017/01/04
syaori
30
王朝装束というと十二単などの女性装束を想像しますが、その影に隠れがちな男性装束に焦点をあてた本。『源氏物語』や『枕草子』『蜻蛉日記』などを引きながら、彼らが身に着けていた衣装が語るドラマ(例えば宇治を訪れる薫大将の装束とその後の行為が宇治人と薫の越えられない身分差を暗示します)を解き明かし、夫や息子のためにその装束の支度をする女性たちの奮闘ぶりも明らかにしてくれます。身分や性格、人との親密度だけでなく、夫や息子の衣装を支度した妻の自負や歓喜など、衣装には様々な物語が隠れていることを教えてくれる本でした。2016/10/17
Hiroh
29
再読(と、気づかずに読んでしまった……)今回印象に残ったのは『源氏物語』髭黒が実はおしゃれで、見方によっては男ぶりのいい格好いい人であること。つい、玉鬘の視点から醜男と見てしまうのは作者の誘導に引っかかっているということなのか? また、オッチョコチョイでいろいろやらかす方弘が、洗練された服を着ていることのおかしみ。2024/03/01
びっぐすとん
18
図書館本。お雛様の優美な衣装にうっとりする3月。衣装の名前や香を焚き染めたり色合わせを楽しむ風習は知っていたけれど、TPOだけでなく相手との上下関係でも変わってくる衣装の選択などが興味を引いた。源氏物語の鬚黒が実はとてもおしゃれな人だったことに気がつかなかった。すっかり玉鬘視点で見てた。裁縫が得意だった道綱母の家族の衣装への意気込みは彼女の誇りだったのだろうな。夫婦仲が悪い分息子に肩入れするのは今と同じ、道綱の勉強にも力を入れれば良かったのに(道綱は残念な大人になった)。女性の衣装のことも知りたかった。2021/03/10
はちめ
7
狩衣の説明で女性をナンパするときようなカジュアルな服としての意味合いがあるとしているが、薫が八宮の留守に宇治を訪問したときに狩衣を着ていたのは、最初からそういう下心があったというニュアンスになる。薫は八宮の厭世風の生き方に共感もしていたが、大君、中君に対する興味も最初から持っていたということではないだろうか。偶然姉妹を見かけて興味を持ったのではなく、最初からこの姉妹も目的の一つだったという解釈が可能になる。 など興味深い内容を含んでいるが、図版が白黒で分かりにくいのが残念。☆☆☆☆2022/04/17