内容説明
記紀によれば須佐之男は大国主命の父であったり、何代か前の先祖であったりする。混乱した神々の系図を著者は二柱の姫神を軸に解読していく。神社の由緒、考古学の成果、朝鮮の史料等を渉猟し、大胆な推理で記紀の隠蔽し続ける事実をあぶり出す。混沌とした神話が一つの大きな歴史となり、卑弥呼や天照大御神の正体さえも浮上する。スリリングで知的好奇心に満ちた傑作古代史論考。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あっこ
14
ちょっと無理があるかなと思うような部分もあったけど、読み物としてはとても面白かった。「記紀」の記述がもう少しはっきりしていれば…なんてことも思うけど、分からないからこそ歴史は面白いのだと改めて感じた。2015/11/14
雛子
5
こ、これは…!って、ひさしぶりに夢中になって読んだ古代史論考。おいおいと言いたくなるところもないではないけど、気持ちいいほどに様々なことに答を導き出した髙山貴久子女史に敬意を表したく。おもしろかった、たぶん何度も読みなおす。2015/12/10
キアヌ安倍
4
二人の女神から記紀では語られない古代を推理小説の様に組み上げられていきます。2016/10/26
meow3
4
記紀が当時の権力者によって編纂され、真実とは異なるだろうということは分かりますが、著者の仮定が真実だとすると事件や因果関係のみならず、人物の血縁関係まで、正しいことが何一つないじゃん!と突っ込みたくなります。この当時侵略や民族の虐殺なんかは普通にあっただろうし、そこまで隠したい真実とは思えないのですが。朝鮮半島の王族や血筋が絡んでいることはあると思う、飛鳥時代にもたくさん交流があるので。 日本の古代史はそこまで詳しくはないですが、それでもかなり強引な話に感じました。2016/08/31
鮎
4
丹生都姫の章では多少の飛躍を感じたけれど、丹念に資料にあたり現地に足を運び、丁寧に書き上げられたよい本という印象。出してくる仮説はかなり大胆なのに、地道な文章のおかげでそんな気がしなくなる。著者の人柄が出てるのかな。肝心の内容は、確かめようのない仮説の真偽はさほど重要ではないとして、それぞれ別個の逸話と神名だと思っていたものがひとつずつ繋がっていくさまは、ドラマチックでとても面白かった。これを小説にしたら野田秀樹「パンドラの鐘」みたいな傑作が出来そう・・・などと思えるだけに、著者の急逝が悔やまれます。2016/06/12