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内容説明
2014年秋,大都市の中心街を市民が79日間も占拠した香港の雨傘運動.この選挙民主化要求は,軟着陸した中国返還後,金融危機で逆転した経済の「中国化」への猛反発だった.一国二制度の成功例「ノンポリ国際都市」は,なぜ政治に目覚め,何を求めるのか.日本と香港の気鋭が歴史背景と現代文化から緻密に解説する.
目次
目 次
はじめに
香港全図・香港中心部地図
第一章 「一国二制度」下の香港
1 「一国二制度」とは何か
2 準国家としての香港
3 地方としての香港
第二章 イギリスの遺産──植民地構造と自由
1 植民地型統治
2 独裁の下の自由
3 自由の限界
4 未完の民主化
第三章 「中国化」と香港の自由──返還後の香港
1 静かな返還
2 「中港融合」と中国化
3 民主化の「中国化」
4 「中国化」の限界と自由社会
第四章 植民地香港における自由の条件──文化と社会
1 香港を語る人々
2 彷徨う魂と江湖豪傑
3 香港アイデンティティの生成
第五章 雨傘運動──立ち上がった観客たち
1 壁・巨人・卵
2 生活空間と政治空間の連結
3 金鐘占領区が見せた未来図
4 旺角:自由と民主のための「闘い」
5 覚醒した観客たち
おわりに 香港の自由、日本の自由
主要参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
30
堅く政治的な側面にアプローチしたかと思いきや、それだけではなくポップ・カルチャーにも言及されておりこの本は懐が深い。香港は語りにくい都市とされる。それはイギリスの領土だった時代を経て今があり、「下」の人々が求める自由や民主と「上」からの押さえつけが矛盾していたからこそ来る難しさであろう。2015年に刊行された本だが今でも充分に読むに耐えうるし、「使う」こともできるのではないか。ぼくたちの国も「上」と「下」の齟齬に苦しんでいるからこそ、香港から学ぶべきところは多いのではないかと思われる。新書ならではの自由さ2020/08/19
Kazehikanai
26
香港の歴史的な意味は興味深い。中国にあって政治的にも文化的にも極めて特殊な存在であるわけだが、その理由がよくわかる。もっとも香港、マカオから帰ってきたばかりだが、現地でその特殊性をつぶさに目の当たりにすることはなかった。表出されない特殊性。表現できない香港文化。アイデンティティーは流動的だというが、低層に流れる個性はとらえどころがない。返還後に生じてきている変化は、中国に溶け込みつつあることを感じさせる。観光客として接する個人としてはマカオのほうが好き。マカオにも言及してほしかったな。2016/02/27
koji
23
日中の30代(執筆時点)の気鋭の学者が、2014年秋の雨傘運動を受けて、歴史背景と香港の現代文化から「香港問題の本質」を説き起こした良書です。TVを見て思うのは運動の中心にいる者の若さ(周庭は10代で参加)。ここに一つの本質がありそうです。香港の若者の価値観は、経済的利益より「市民生活・政治」にあるということ、もっと言うと香港人が長い英国の占領統治、その後の中国返還の下で培った「自由」を存分に使うことが香港の活力を引き出せるという意識、その表れとしての運動方法論です。本書の指摘により見方が深まりました。2019/09/06
jamko
20
ここ最近のデモのニュースを見るにつけ、もっと背景を知りたいなと選んだ本書。植民地時代から雨傘運動まで、知らないことばかりで面白かった。政治的自由が縛られてるからこそのデモの重要性。日常の中にデモがあり、デモの中に日常を持ち込む臨機応変なパワフルさ。文化とともに培われたアイデンティティの物語性も。雨傘運動当時はデモ側も議会側もともに行動の激化は避けたく、戦争の危機の一線を越えることはないという認識があったのだという。今の香港はどうだろうか。その一線ギリギリまで来てるんじゃないだろうか。→2019/08/15
skunk_c
19
イギリスによる植民地支配という「不自由」から、北京政府の統制下という「不自由」(しかも返還の少し前には天安門事件があった一方、イギリス統治下の最後には民主化の兆しもあった)の中で、ある意味極めて自由に生きる香港の人たちの姿が捉えられている。特に雨傘運動の章は今の日本に足りないものをたっぷり見せてもらった気分。経済的には返還直後のような優位さは失われているが、世界一のfacebook加入率など、その旺盛な言論活動は活力に満ちあふれている。ある意味ネットで去勢された日本社会との違いに愕然とすらした。2016/06/20