内容説明
「無条件降伏」以外譲ろうとしない米国、「国体護持」が認められなければ徹底抗戦しかないとする日本、両者相容れぬ緊張状態の中、在スイスの米OSS支局長アレン・ダレスの下で、とある諜報網が作られた。日本の陸・海軍武官、公使、国際決済銀行のスウェーデン人、亡命ドイツ武器商人……両政府の間を取り持ち暗躍する陰の主役達を描く。※新潮選書版に掲載の写真は、電子版には収録しておりません。
感想・レビュー
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kawa
31
太平洋戦争の末期、結果として日米最高指導者のホットラインとして機能し終戦に少なからぬ貢献をした日米のスイス諜報網の緊迫の動きを解説。天皇制維持を終戦条件とするか否かと原爆投下を巡って、トルーマン大統領、バーンズ(原爆)暫定委員会大統領代理がソ連牽制重視から「条件×、原爆投下○」、グルー国務長官補、ダレスOSSベルン支局長が戦後の日本利用重視から「条件○、原爆投下×」、ステイムソン陸軍長官が米軍の損害回避重視から「条件○、原爆投下○」と、様々な複雑な動きの中で終戦にこぎつけたことを初知り。(コメントへ)2020/09/09
軍縮地球市民shinshin
17
スイスの日米双方における終戦工作の全容を米公文書を用いて明らかにした傑作。選書という一般向けの体裁ではあるが、内容は学術書に匹敵する。日本がポツダム宣言受諾を渋っていたから原爆が2発落とされて昭和天皇の判断で無条件降伏をしたと一般に思われているが、1945年5月以降、終戦工作はスイスルートで活発化しており、原爆投下も最早日本がどうこうということではなく、米からすれば戦後のソ連との駆け引きで都市部に落とすことはトルーマン大統領が判断していた。また昭和天皇がポツダム宣言受諾を決意したのも、「天皇制」を認める意2021/12/05
Lila Eule
7
中田整一のドクター・ハックに感動しましたが、アメリカの中枢にも親日家がいて、天皇制存続と国体維持、早期終戦を画策していたとは驚きました。トルーマンの原爆投下の野心が、使える機会作りと防共の対ソ威嚇にあったとは・・・京都を原爆投下第一候補地からはずしたのは、長老の米陸軍長官であったとは・・・藤村海軍中佐の美談はフィクションで戦後はCIA関係人であったとは・・・惨劇収束に向けて懸命な米国要人もいたことに驚きました。2015/08/12
Masayuki Shimura
3
【終戦への底流】戦争を終わらせるための外交的闘いを余すところなく描いた傑作。ある程度の予備知識を必要とする一冊ではありますが,一度回り始めた戦争という大車輪をどのように人間が止め得るのかを考える上で参考になりました。また,自分が思った以上に,アメリカは日本の敗戦をソ連との関係の中で眺めていたことに驚きを覚えました。2018/08/15
佐々木
2
泥臭く地味で、でも確かに大きな役割を果たした「外交」の等身大の姿があります。2017/06/26