内容説明
史上最強の剣豪といわれる宮本武蔵。彼の才能の中で、最も卓越したのは「見切り」という計算力だった。試合の相手を選ぶとき、必ず己よりも弱いと見切ってからでなければ、立ち合わなかった……。通説の裏に潜む、武蔵の実像に迫る表題作ほか、さまざまな生き方をした、有名無名五人の剣客を描く短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
104
表題作の「真説宮本武蔵」他、その武蔵との決闘を行った吉岡一族、千葉周作など有名無名の剣豪に纏わる短編集。「真説」としたのは、武蔵に係る伝聞は本人やその弟子によるものが多いため、事実と異なる事も多い。そこで武蔵と同時代に生き、剣豪でもある渡辺幸庵の伝聞に寄っている。その幸庵をして、当代随一と言われた自分の師よりも「井目優っている」と言うのだから、やはり剣の腕前は相当なものであったのだろう。ただ、剣の腕でなく軍師としての士官を望んだのが武蔵の不幸であった。★★★+2016/07/24
こきよ
69
吉川版とは一線を画する武蔵像ではあるが、より実像に近いのは無論此方であろう。その他の剣客短編も小気味良く面白い。吉岡兄の凄味に痺れた。2016/02/28
Die-Go
66
宮本武蔵。吉岡直綱・又市郎兄弟。千葉周作。森要蔵。栃尾源左衛門。バスク人の蜍児(ユイズ)の六人の剣客を描いた短編集。表題作である「真説宮本武蔵」では、通説通りにはいかない宮本武蔵像を提示してくれている。「千葉周作」は『北斗の人』において長編化されているので、また手にとってみたい。★★★★☆2016/06/02
Taka
56
またまた司馬さんの短編集。今度は剣客の話題がいくつか。聞いたことのある人もいれば全くの初耳という人もいる。よくよく調べ上げて執筆に取り掛かるのだろうが、それにしても想像力が想像を絶する。2019/06/06
AICHAN
46
再読。表題作のほか「京の剣客」「千葉周作」「上総の剣客」「越後の刀」「奇妙な剣客」を収録。江戸初期に驚きの長寿をまっとうした渡辺幸庵の「渡辺幸庵対話」に、「予は柳生但馬守宗矩弟子にて、免許印可も取りしなり。ときに竹村武蔵といふ者あり。自己に剣術を錬磨して名人也。但馬にくらぶれば、碁にていへばセイモクも武蔵強し」とある。竹村武蔵とは宮本武蔵のことらしい。セイモクも強しというのは段違いに強いということ。表題作はこの記述や「吉岡伝」等によって武蔵像を描く。悲運の武蔵一代記。2023/02/18