内容説明
人間と職業との関わりは、現代に到るまでどういうふうに移り変わってきたか。人が働き、暮らし、生きていく姿を徹底したフィールド調査の中で追った、民俗学決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
121
海。山、革、村、町。それぞれの民の職業について。現在も受け継がれている仕事もあれば、ほとんど絶えてしまった職業もある。時代劇にでてくる商いを営んでいる店の丁稚についても書かれており興味深く読むことができた。そういえば私の子供の頃の事を思い出してみると、町角でヤカンや鍋を修理する鋳掛屋や、獅子舞、どこにでもあったタバコ屋にはお婆さんが店番していたし、風呂屋で使う木切れを運ぶトラック、リヤカーを引き歩くボロ買いetc。なんでも合理化や都市化に伴って消えてゆく。50年語はどんな仕事が無くなっているのかな。2021/12/03
Willie the Wildcat
73
海・川・山などの自然と生活の繋がり、都会と地方、職業の変遷など、陰陽両面での文化の振り返り。維新・大戦などの歴史的うねりとは無関係に築かれる貴賎観が印象的。特にその自然発生的な醸成に、「生」の本質の一端。掲載写真は、当時の風景及び”言葉”の理解にもれなく一助。中でも印象的なのが、『振売』の写真。情緒豊かで、”良さ”が滲み出てる。読後感じるのが、開国と共に花開いた多様性の一方で、植え付けられた”官尊民卑”の功罪。但し、それも踏まえた故の表題なんでしょうね。2018/11/05
きいち
35
冒頭、この時の農村へのネガティブな記述で始まることに驚く。◇自給できる村の世界。そこは豊かで、一人が何役もこなすため職業は分化しない。一方で別のムラは生産力が弱く交易に頼らねば生き延びられない。次三男を都市へ送り出し、変事があれば娘も売らねばならぬ。競争相手は多く特化し質を上げる必要がある、専門職はそうやって生まれた。あれ、これは日本企業の変化の記述か?グローバル化のこと!?◇最後まで読み、宮本が歴史をたどるのは冒頭の農村の苦境からの脱出方法を探るためとわかる。答えはない、あるのは模索し続ける宮本の姿だ。2018/01/19
Akihiro Nishio
21
相変わらず冴え冴えの宮本節である。前半は農村と、山の民、海の民の話で、宮本の得意な話である。後半は、流浪の民、行商民、出稼ぎ民、そして都市の職人にスポットをあて、自給経済の破綻から商工業の発展までの道のりを鮮やかに浮かびあがらせる。乞食と押し売りが紙一重であるとは宮本でなければ言えないだろう。元々自給できない北部の場所に、交換するための資源を得るために人が入り、それがやがて町として発展していく過程を、こうも見事に描写されると、先進国と途上国の立地についてより深く理解できる。こういう素晴らしい仕事をしたい。2018/04/23
T2y@
18
物々交換〜行商が、この国の商売のルーツであり、各地の営みと生業(なりわい)が丹念に綴られる。 『芸事』も、施しを受けて来た“流浪の民”が、生きていく為の『売り物』として成り立って来たという説も興味深い。 夏休みの自由研究的に、民俗学を“かじり知った”一冊。2015/08/21