内容説明
歴史小説に新しい時代を画した司馬遼太郎の発想の源泉は何か? 帝国陸軍が史上初の惨敗を喫したノモンハンの戦いを、太平洋戦争を戦車隊員として戦った自身の体験と重ね合わせながらふりかえり、敗戦に至る壮大な愚行に対する一つの視点を呈示するなど、時代の諸相を映し出す歴史の搏動をとらえつつ、積年のテーマ“権力とは”、“日本人とは”に迫る独自な発想と自在な思索の軌跡。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
り こ む ん
39
歴史と視点。本当に昭和初期の日本を嫌いなんだなと…戦車の話からひしひしと…司馬さん曰く、日本史上、変質した昭和初期の話になると、経験もされているので感情が、全面に出てくる。ご本人は、いつも通りのスタンスを保とうとしているのだろうけど、読んでいると、歴史に対する愛情や好奇心は消え失せ、憎しみと、蔑みみたいなものを感じてしまう。白井小助や黒鍬者。人間が神になる話は面白かったな。2016/02/21
金吾
33
○面白い話題が多かったです。特に軍隊生活を通じた司馬さんの軍エリートへの評価は卓見だと思います。ただ軍隊のみではなく今もそうなのではないかなあと感じます。他に「豊後の尼御前」「見廻組のこと」「長州人の山の神」が面白かったです。2024/04/12
けいた@読書中はお静かに
33
司馬遼太郎初エッセイ。いちばん印象に残ったのは太平洋戦争時代の自身の所属していた戦車部隊の話。戦車は戦車と名前がついてるからには万国共通、同じ戦車。師団も万国共通、同じ師団。そんな妄想の中で戦ってたら司馬さんの昭和軍人嫌いも分かります。今で言えば、軽自動車もスポーツカーもレクサスも同じ車って言ってるようなものでしょうか。他にも本土決戦前の作戦会議で『戦車の回りに民間人がいたらどうしましょう?』という質問に対して『曳き殺せ』という国民を守る軍隊として本末転倒な言葉にはびっくり。2015/11/03
aponchan
22
清水勝彦氏著書『組織を脅かすあやしい「常識」』に記載があったことをきっかけに読了。歴史上の人物を司馬氏なりの表現でエッセイとして仕上げてある。日本人の気質を一つ一つの話の中から知ることができ、非常に面白かった。最近、読んだ海軍関係者の人物伝に加えて陸軍戦車に関する内容は、現代日本にも繰り返されている部分が大いにあると思われ、考えさせられる。2019/03/20
さきん
22
戦車隊に所属していた著者による回想は貴重だと思った。本人は思い出すのもいやな感じであったが、当時日本陸軍の戦車の性能から運用までのお粗末な様子が想像できる。予算不足と官僚システムに問題があると著者はみている。2016/09/11