内容説明
大正、昭和初期の流行作家である芥川龍之介や菊池寛などが集まるレストランで十八日間だけ働いた宇野千代は、後に自らも筆を執り、女流作家の地位を確かなものにしていく……。尾崎士郎・東郷青児との愛情や、梶井基次郎・萩原朔太郎を始めとする作家たちとの友情に彩られた、彼女の鮮やかな半生を綴る貴重な文壇史随筆集。
目次
滝田樗蔭に貰った五十銭銀貨
絶世の美少年
稿料三百九十円
幸運のパターン
もう一つの家
酒屋の前は通れない
四十年間の緊張
一種色っぽいものの種
この人は危い
残酷な唄〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Noelle
5
エッセイ等で散見していた著者の人生を彩る男女を問わない貴顕の文学者たち。大正から昭和にかけて、こんな風にキラ星のごとく著者の周りでドラマが起こり、出会いがあり、別れがあり。著者はすごい時代を生きていたんだと改めて感じる。掛け値なしの人生を振り返るその口調には微塵も後悔などなく、おのが人生の肯定しかない。その語り口の男前なこと、胸がすくようである。この百年で、どれくらいの女性が宇野千代に続けたであろうか? 人生を生き切るという課題はなかなか難しい。それを難なくやってのけたのが宇野千代という女性なのだろう。2017/02/09
しろ
2
この人の心の素直さは本当に羨ましい。昭和という時代なら尚更だが、平成に生きたとしてもかなり奔放だと称されるだろう。誰にでもすんなりと心を開き、心の赴くままに相手に惹かれて、心の赴くままに行動する。二回目になるが本当に羨ましい。そんな心のままに行動するものだから、谷崎潤一郎や小林秀雄の地雷を踏み少し痛い目を見たエピソードはこう言っては悪いがとても面白い。意地悪心で面白がってるのではなく、子供が何か失敗してしまったのを見たような気分になる。2015/10/19
コノヒト
1
きらっきらに輝いて見える楽しそうな半生。集まってくる多士済々。著者の旺盛な好奇心行動力社交性が彼らを呼ぶのだ。上品な老婦人がまさに目の前で語り聞かせてくれているような文章。旧仮名遣いで書きつづられていることも必然。2016/08/15
hahiu
0
さらさらとした文体で読みやすいし、本人の生き方が良く言えば軽やかで無邪気で、面白く読んだ。が、本人が最後の最後に○○さんの日記によれば真実はこうで・・・と自分の記憶が思い込みで相当に間違っていることがいくつか述べられていて、たぶん他にもあるだろうとさえ述べていて思わず苦笑いするしかない。近くに居たら目が回りそうだけど、本人はいつも幸福そうで、ちょっといいなとも思う。2014/07/16
は
0
さまざまに登場する文学者たちの感性にときめきを禁じえない。2018/07/26