内容説明
著者の櫻井成廣(一九〇二~一九九五)は城郭研究のパイオニアの一人にして、茶道、古典芸能、神道の歴史にも通じた哲学教授(青山学院大学)、異色の豊臣秀吉研究者でもありました。著書や雑誌論文から抜粋した長短とりまぜ四十数編の短文を、「系譜」「城」「芸能」「瓢箪」「神道、国学」などのテーマ別に再編集しています。
主なテーマは以下の通り。秀吉は「美」の世界に通じた賢者/秀吉の父親は影の薄い入り婿で、母親が豊臣一族の始祖的な存在/滅びたとされる豊臣氏の血筋が、女系によって現代に伝わっている/母方祖父は神社の神官/国学者の人脈は豊臣氏とのかかわりが深い/大坂城の古代史から怪談まで/秀吉は宮廷雅楽の専門家?/千成瓢箪は水難除けのまじない。
電子書籍ならではのリンク機能により、本文で言及された文献の原典(写本、刊本)を紹介しています。江戸時代の写本や明治・大正期の書籍が、国立国会図書館など公的機関によって次々とインターネット上で公開されているので、それを電子書籍の読書にいかそうという趣向です。
発行元の桃山堂は、豊臣秀吉の「謎」にまつわる本/電子書籍を刊行するニッチな出版社です。本書はその第一弾です。
目次
まえがき
母系の一族/賤ヶ岳で活躍した先祖
第一章 豊臣女系図
〈紹介と解説〉母方祖父は神官/なぜ豊臣の「母」には権威があるのか
母の系譜
おばの系譜
姉の系譜
生命の流れ
第二章 国学者と豊臣一族
〈紹介と解説〉太閤記と国学者
国学・神道・秀吉
水
第三章 桃山時代の精神
〈紹介と解説〉日本文化のアイデンティティ
秀吉がつくった桃山時代
聚楽第の謎
音楽に耳をすますように歴史に向き合うこと
第四章 大坂城の遠景
〈紹介と解説〉 失われた城を描く/総合芸術としての城
聖地と城
大坂城の伝奇
母なる山里丸
小田原城から江戸城へ
第五章 日本芸能史のなかの秀吉
〈紹介と解説〉なぜ芸能文化に通じていたのか/歌舞伎と秀吉
宮廷雅楽の復興者
能役者 秀吉
歌舞伎と豊臣伝説
第六章 千成瓢箪と水の呪術
〈紹介と解説〉 聖なるイコン
千成瓢箪と水の呪術
第七章 安土城は古墳か
〈紹介と解説〉古墳と城
安土城は古墳か
第八章 水へのまなざし
〈紹介と解説〉秀吉と哲学教授をつなぐもの
水と城の話
青山に水車があったころ
あとがき
ほか